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第6回 国際保健医療協力研修 参加報告
第6回 国際保健医療協力研修 参加報告
国際保健医療協力研修に参加させていただきました。本研修は国際保健医療協力活動に参加し国際保健に貢献する人材を育成することを目的とし、国内での5日間の講義と計画立案実習、ベトナム社会主義共和国において7日間のフィールド実習が行われました。講義では開発途上国と国際保健医療協力に関する基礎的な知識、計画立案実習では問題解決方法に関連した手法を学び、フィールド実習の準備を行います。そしてベトナム現地ではスタッフとともに日本で学んだ知識や手法をいかしてグループのテーマに沿った課題の解決に取り組みます。私はNCD(非感染性疾患)をテーマとしたグループに所属しました。現在のベトナムは経済発展に伴う食習慣や生活習慣の変化、また高齢化に伴い生活習慣病が急増していますが、来院する頃には重症化していることが多いことが問題視されています。それは経済的な理由から通院し続けることが出来ないことや、検診システムが整備されていないため発見が遅れるなど様々な問題が背景にあると予想されます。今回は国民の病気に対する知識や意識の不足という点に着目し検討を行いました。生活習慣病を予防する重要性、罹患した後の継続治療の必要性を患者さんに知ってもらうことを目的とし、日本で行っている活動の紹介や血圧手帳の見直しなど今すぐに行動出来る活動を考えました。時間の関係上、実際に行動に移すことはできませんでしたが、現地スタッフの今後の活動のひとつのきっかけになっていれば大変嬉しいことです。
また、研修ではベトナムの医療現場を訪問させていただきましたが、驚くことが多々ありました。ベトナムの医療提供体制は中央レベル、省レベル、郡レベル、コミューンレベルという階級制で構成されています。上位病院で重症患者を担当し、下位病院で軽度疾患の患者を担当し、重症化した場合は上位病院へ紹介するという体制をとっています。しかし、実際は上位病院に患者が集中してしまい、待合や廊下に外来患者が溢れており、入院患者も病床数を上回り、1つのベッドの2人の患者が寝ている場面も見られました。患者を受け入れようという気持ちは感じられますが、感染のリスクや医療の質という点で改善が望まれます。また、診療放射線技師という目線で見ると、医療機器は日本にも引けをとらない最新のものが導入されていました。しかし、残念ながら品質管理はほぼされておらず、多少具合が悪くても騙し騙し使っているようなこともありました。品質管理や精度管理も重大な課題と感じました。このような少し残念な場面もありましたが、一方で私個人的に見習いたいと感じたことがありました。それは患者への家族の関わり方です。ベトナムでは常に患者家族が病室に患者と一緒にいます。ICUや救急外来にも家族がいるのは驚きました。しかし、歯磨きや着替え、清拭といった患者の身の回りの介助はすべて家族が行っています。家族は病院に毎日泊まっているので、病室のベランダには家族の洗濯物が干してあり、とてもほのぼのした印象を受けました。その背景には日本と社会的背景や労働時間の違いやベトナムの看護師不足という問題があるかもしれません。しかし患者の家族が出来ることはしてもらうこともいいのではと感じました。
今回の研修に参加させていただいて充実した14日間だったと感じています。先に述べたように今回は患者教育を目的としましたが、そこに至るまでには大変な苦労がありました。ベトナムのスタッフとは考え方や価値観に違いを感じましたし、宗教的な事柄に直面することもありました。しかしそんな中で互いに意見を摺り合わせながらひとつの目的に向かって共に考え、議論、検討を行えたことはとても有意義で貴重な経験だと感じています。同じチームの皆様に感謝の気持ちが絶えません。またこのような機会を与えていただき、職場や関係者の皆様に感謝申し上げます。
診療放射線技師
川尻