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2017年 国際展開推進事業 (アジアにおける放射線・臨床検査・ME 部門の技術支援事業)
2017年 国際展開推進事業(アジアにおける放射線・臨床検査・ME 部門の技術支援事業)
事業概要
Laos国では、2010年12月17日より保健セクター事業調整能力強化フェーズ2における技術プロジェクトが開始され、セクターワイド・コーディネーションメカニズムの確立により、期待される機能は徐々に改善傾向にはあるものの、ODAによって導入された数多くの医療機器は、国民一人一人の保険医療に対して、十分な機能が発揮されていないのが現状です。
今回、ビエンチャン首都圏に位置するトップリファラル病院3施設(セタチラート病院、マホソット病院、ミタパープ病院)の中でのセタチラート病院を対象とし、医療機器が持続的に稼働するのみならず、機器の特性やメンテナンスの重要性について理解を深め、わが国のこれまで培ってきた公的医療保険制度についての経験を活かした医療技術支援を展開することを目的としました。
医療技術等国際展開推進事業で、まず考えていかなければならない事は、プロジェクトデザインを決定する事です。大きく分けて以下4つに分類されます。
① 投入(Input)
② 活動(Activities)
③ 結果(Outputs)
④ 成果(Outcome)
どのような成果を成し遂げるには、どのような結果があって、そのためにはどのような活動をしなければならないのか。活動するためには、どのようなものを投入しなければならないのか。今回、医療機器の適正な管理を行う事で、長期的に機能を維持、稼働させるために必要なOutputs・Outcome指標を含めたプロジェクトデザインをする事となりました。
研修日程
研修日程としては、以下の通りです。
○ 現地視察:2017年7月10~13日 (持木 武田)
○ 受け入れ研修:2017年11月20日~12月8日 (放射線診療部門スタッフ)
○ 追跡調査・follow up研修:2018年1月15~18日 (武田)
現地視察
現地視察において、セタチラート病院は勿論、DHC/保健省ヘルスケア局、NIOPH 国立公衆衛生院を訪問し、またNCGM海外拠点担当者との協議を重ねることにより、Laosの保健情勢についてより深く理解する事ができました。
セタチラート病院では、デジタル化の普及が進んでいない状況であり、X線撮影系では、従来までのスクリーン/フィルムシステムが稼働していました。診療放射線技師の職域に関しても、日本と違って撮影業務・検査業務が主として行われており、装置の品質管理・線量管理等の管理業務においては、検討できる点が確認できました。
以上の視察を基に、現場のニーズを考慮し現地スタッフとの協議を重ね、NCGMでの受け入れ研修については、現状稼働している装置に関する撮影技術、保守管理を中心に、今後の装置導入を見据えたデジタルシステムの基礎を含む内容とすることで合意しました。
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セタチラート病院
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X線CT
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フィルム/スクリーン系撮影
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研修事業内容についての協議
受け入れ研修
研修は3週間のプログラムを組み、座学による講義・臨床現場での見学・実機を用いた実習を行い、研修生の理解度を日々確認しながら進めていきました。後のOutputs・Outcome指標が十分達成できるように、研修生には何度も繰り返し確認しました。
本研修終了時には研修生による報告会を開き、その中で今後の課題・検討項目を挙げていただき、自国へ戻ってからの取り組みについても報告していただきました。
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座学による研修
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日常点検手法による研修
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撮影ポジショニング実習
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空間散乱線量測定の実習
追跡調査・follow up研修
NCGMで行った研修内容がどの程度活かされているのか、伝達できていない点はどこなのか。セタチラート病院にて、検証と確認を行い不十分な点は可能な限りfollowし、解決に向けてdiscussionしました。さらに、職場環境の改善に向けての助言を行いました。
NCGMでの研修からそれほど期間を開けない状況でのfollow upではありましたが、機器管理や品質管理の必要性の理解、撮影条件の見直し等、少しずつではありますが、スタッフ間に共有されつつある印象を受けました。
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撮影条件再設定
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シャウカステン清掃、蛍光管交換
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撮影補助具の作成・利用
まとめ
今回、単年度計画に基づくOutputs・Outcomeに関しては、概ね達成が見込まれるものの、現地の実状にあったフォローアップを中心とした、継続的な事業展開を今後も実施しなければ事業の推進には至らない状況が示唆されました。
単年度で成し遂げた成果を現地で活かすためには、現地での検証を含めた期間を十分確保し、今後もfollow upを中心とした事業を展開する必要があると考えています。
事業の継続を希望している現地の声に耳を傾け、高度な医療技術を現地で最大限に展開し、地域全体の活性化に繋げられるよう、今後も継続して事業展開を行っていきたいです。
放射線診療部門
画像情報管理主任 持木 和哉
副診療放射線技師長 武田 聡司