メニューにジャンプコンテンツにジャンプ

トップページ > 診療科・部門 > 診療科(内科系) > 放射線核医学科 > 核医学検査 > 心サルコイドーシスのFDG-PET検査

心サルコイドーシスのFDG-PET検査

心サルコイドーシスの特徴

 サルコイドーシスは、様々な臓器に肉芽腫を発症する疾患ですがその原因は不明です。発生頻度が高いのは肺門部のリンパ節、肺、眼、皮膚、唾液腺、心臓、神経、筋肉などで結核によく似た結節状の病巣“肉芽腫”(病理学では非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫)を作ります。病変ができる臓器により目のかすみ、視力低下、せき、呼吸困難、不整脈など様々な症状が出ますが、無症状のことも多く、健康診断の胸部X線写真ではじめて指摘される場合もあります。

 2006年に日本サルコイドーシス学会から診断基準が出され、心サルコイドーシスに関しては「2016 年版 心臓サルコイドーシスの診療ガイドライン」が現在公表されている最新の診断基準となります。サルコイドーシスは眼病変を契機として診断されることも多いですが、臨床的に問題になるのは肺と心臓の病変です。肺の病変は進行すると、せきや呼吸困難を引き起こします。両側肺門部のリンパ節腫脹は肺病変に特徴的な所見で、一般的にその診断には胸部単純X線写真や胸部CTを行います。

心臓の病変(心サルコイドーシス)は、致死性不整脈や重症心不全をきたし、突然死の原因ともなるため、サルコイドーシス患者の予後を大きく左右します。また、心サルコイドーシスの頻度は欧米にくらべ本邦で高いとされています。肺病変などをはじめとした全身性のサルコイドーシスに合併する以外に、心臓に限局的発生する型も報告されています。これらの理由から、心サルコイドーシスの活動性の評価は治療を進める上で重要な指標となります。

心臓病変の主な臨床所見としては、不整脈(心電図)、心臓の形態異常や不整な動き(超音波検査)、心臓MRIによる異常な造影効果、ガリウムシンチグラフィーとFDG-PETの異常集積があげられます。この中で、当科はガリウムシンチグラフィーとFDG-PETを担当しています。

 FDGは糖分に似た性質を持ち、活動性を有する心サルコイドーシスに集積し、病変の分布や病勢を評価するのに有用です。また、FDG-PETはガリウムシンチグラフィーより感度が高く、検査結果が得られるまでの時間も非常に短いです(FDG-PET検査は、投与から約2時間以内、ガリウムシンチグラフィーは約2日間)。FDG-PET検査による心サルコイドーシスの診断は2012年から保険適応になり、2014年からにはガイドラインに採用されました。

心筋は脂肪酸と糖を主なエネルギー源とします

心筋は脂肪酸と糖を利用する

生理的なFDG心筋集積の抑制

 心筋はエネルギー源として、脂肪酸、糖、乳酸、など様々な代謝基質を利用することができますが、主に脂肪酸と糖を利用しています。通常の腫瘍を評価するためのPET検査前には5-6時間の絶食を行っていただきますが、この条件では心筋は糖を利用しており、比較的多くの方に心臓への生理的なFDG集積を認めます。絶食時間を十分に長くすると、血糖値が下がり血液内の遊離脂肪酸が上昇するのため、心筋のエネルギー源はさらに脂肪酸代謝にシフトして糖分の利用が減り、結果としてFDGの生理的集積も低下します。

 正常な心筋への生理的なFDGの集積を十分抑制した状態にできない場合は、心筋に分布する心サルコイドーシスを検出することが困難になります。

 心サルコイドーシスの診断を可能にするために、以下のような心筋の生理的なFDG集積を抑制する方法があります。

  1. 18時間以上の絶食
    具体的には、前日夜7時頃までに夕食を終え、当日の朝食、昼食を絶食とし、午後2時頃から検査を始めるというスケジュールで検査をおこないます。長時間絶食は、患者さんの十分な協力が必要となります(担当医の先生は、患者さんの体調や服用する薬剤なども合わせてご検討ください。)
  2. 低炭水化物食(+高脂肪食)
    低炭水化物食を用いる方法も心筋への生理的なFDG集積の抑制の方法として、大変有効とされています。(当科は絶食法を基本としていますが、状況に応じて低炭水化物食をご案内する場合もございます)
  3. ヘパリンの投与
    ヘパリンは抗凝固薬です。一回の投与の場合、その効果時間は数時間と比較的短いお薬です。ヘパリンを血中に投与すると、血液内の遊離脂肪酸が上昇し、その結果心筋は糖分よりも脂肪酸をより多くエネルギー源として利用するようになります。しかし、単独での効果はあまり高いとは言えず、上記方法で抑制ができなかった場合に使用を検討することがあります。

心サルコイドーシスの所見の評価

 心筋病変の評価は、心臓のPET撮影を行い、心筋シンチと同様に、心筋長軸に沿って切り出し、短軸断層・長軸水平断層・長軸垂直断層の3軸断層像とブルズアイ画像を作成し、タリウムや脂肪酸などの心筋シンチ画像と比較読影します。FDGの限局性集積病変が、タリウムや脂肪酸画像の集積低下部と一致した典型例を提示します(図1)。

図1.60歳代女性。心サルコイドーシス再燃。長時間絶食で心筋の前壁、側壁に限局性のFDG集積が見られ、同部のタリウム・脂肪酸の集積が低下しています。活動性の心筋サルコイドーシス病変を疑う所見です。左MIP画像、右FDGPETの3軸断層画像と、タリウム・脂肪酸のSPECT像。

左MIP画像、右FDGPETの3軸断層画像と、タリウム・脂肪酸のSPECT像。

 MRIでは遅延造影病変として心サルコイドーシス病巣の検出は可能で、診断基準にも記載されています。しかし、ステロイド治療後の変化は乏しく、ペースメーカーや埋め込み型除細動器はMRIの障害となります。PETでは支障はありません。PET/CTで検査を行う場合、そのCT部分とペースメーカーの相性が悪いと支障をきたす可能性は否定できませんが、今までそのような報告はありません(主治医の先生ともご相談をお願いします)。

検査前の注意事項と説明書

 不整脈発作など危険な合併症があるため、心筋サルコイドーシスの活動性の診断は重要で、2012年から保険適応となりました。

 検査前日の夕方夜7時ころまでに通常通りの夕食を召し上がっていただきます。この後は、絶食となり、水あるいは甘くないお茶のみでお過ごしただくようお願いします。朝食、昼食は召し上がらないでください。検査は午後2時前後に予定され、18時間以上の絶食が担保されます。

 この検査を依頼される先生におかれましては、上記の注意事項につきまして、十分に患者さんにご説明くださいますよう、お願い申し上げます。

心サルコイドーシスのFDGPET/CT検査説明書 兼 予約票(PDF:139 KB)
Get Adobe Reader

PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。