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心筋シンチグラフィ
心筋シンチグラフィ(99mTc-テトロホスミン, 201Tl, 123I-BMIPP, 99mTc-MIBI, 123I-MIBG)
心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。心臓の筋肉(心筋)も活動するためには栄養を含む血液が必要であり、心筋には冠動脈という3本の細い血管をとおして血液が分配されます。この冠動脈が狭くなる、詰まるなどによって心筋に障害が生じます(狭心症、心筋梗塞)。
この冠動脈の形状や内腔の状態を確認するには、血管造影(冠動脈造影)や冠動脈CTが利用されます。しかし、冠動脈の形状を見るだけでは、心筋に必要な血液が十分に分配されているか、心筋の機能を直接判断することは難しいため、心筋へ流れる血液の量や心筋の機能を画像化する方法として、心筋シンチグラフィという検査を利用します。
下記の例では、紫色のところが血流が低下している領域になります。前壁から側壁における血流低下を確認することができます。
負荷心筋シンチグラフィ(99mTc-テトロホスミン, 201Tl)
負荷心筋シンチグラフィは、心臓に負担をかけた状態(負荷)と通常の状態(安静)の二回検査を行い、それらの画像の差を見て心筋の機能を評価する検査です。運動など心臓に負荷がかかる状況では、心筋は通常よりも多くの酸素を必要とします。これは血液によって供給されますが、これが十分でない場合に、狭心症といわれる胸部の痛み、息苦しさなどの症状が現れることがあります。心筋に血液を送る冠動脈が狭くなっていたとしても、通常の生活ではこのような症状は現れないことも多いため、心筋シンチグラフィ検査が行われます。
心筋シンチグラフィ検査は、心臓に供給される血液を画像化する検査薬を利用し(注射)、その検査薬の集まり方をガンマカメラという撮像装置で撮影をし、診断を行う検査です。負荷をかけた場合に心臓に検査薬が十分集まらず、安静の時に集まった場合、心臓は負荷に耐えられない状況にあると判断されます。また負荷、安静ともに検査薬の集まりが悪い場合は、心筋梗塞の可能性が疑われます。このように、負荷を行った場合の画像を判定するには、その比較として安静の画像が必要となりますので、2回(負荷、安静)の検査が行われます。
負荷の方法は大きく分けて2種類あります。
1.トレッドミルというランニングマシンで歩行やランニングを行っていただく方法(フィットネスバイクを利用する場合もあります)
2.薬剤を利用する方法(疑似的に心臓に負担がかかった状態にいたします)
これらの方法は、患者様の状態を見て、循環器医師、主治医や検査担当医の判断のもとに選択されます。いずれの方法においても循環器医師が、患者様の状態、血圧や脈拍などを常時確認しながら検査を行ってまいります。この負荷をかけている状況下で、検査薬を投与していきます。その後、ガンマカメラによって心臓の撮影を行っていきます。
安静時は、検査薬の注射のみを行います。その後は負荷の場合と同じように、心臓の撮影のみを行っていきます。待機時間や撮影時間は、負荷の場合と同じです。
検査時の諸注意
原則として朝食は摂取しないでください。水分は摂取していただいて問題ございませんが、検査に影響を及ぼす可能性のあるお茶、コーヒーなどのカフェインが豊富な飲料は前日から控えてください。内服薬は服用していただいて問題ございませんが、糖尿病の治療薬の場合は食事を摂取しないこととのバランスを考える必要がありますので、主治医にご相談ください。
*当日のスケジュールとおおよその所要時間は添付のファイルを参照ください
負荷心筋シンチグラフィ:99mTcテトロフォスミン(心筋血流診断薬)狭心症の例
上記の例では、運動負荷時に心臓への検査薬の集まりが二か所(前壁、下壁)で低下していますが、安静時では検査薬は心臓全体に集まっています。この結果、この二か所では負担に耐えられるだけの十分な血液が供給されていないことがわかります(心筋虚血)。3本の冠動脈のうち2本で血管が狭くなっていることが予想されます。
安静心筋シンチグラフィ(201Tl, 123I-BMIPP)
心筋のエネルギー源は主に糖分と脂肪酸です。通常は脂肪酸を優先して利用していますが、同時に酸素も消費します。心筋に障害が出始めると、そのエネルギー源を酸素を同時に消費する脂肪酸から酸素の消費を抑えることのできる糖分に変化させていきます。安静心筋シンチグラフィでは、123I-BMIPPという心筋の脂肪酸代謝を反映する検査薬と201Tlという心筋への血流を反映する検査薬を同時に用いて、心筋の障害の程度を確認します。
123I-BMIPPが心筋に十分集まらず201Tlが心筋に集まった場合、その領域では心筋の障害がはじまっていて、エネルギー代謝を糖分に変化させている可能性があります。また、エネルギー代謝が糖分に変化している可能性がある場合、FDG-PET/CTという検査によって、どの程度糖分の代謝が行われているかを確認することもできます。
検査時の諸注意
原則として朝食は摂取しないでください。水分摂取には特別な制限はございません。内服薬は服用していただいて問題ございませんが、糖尿病の治療薬の場合は食事を摂取しないこととのバランスを考える必要がありますので、主治医にご相談ください。
検査薬を注射してから15分後に撮影を開始 → 約30分間の撮影 (通常はここで終了) → 条件によっては3時間後に再撮影の可能性があります。
下記の例では左の画像と真ん中の画像で矢印の箇所が異なった集積を示しており、心筋代謝障害が起こっている可能性があります。
心筋交感神経シンチグラフィ(123I-MIBG)
心臓の周りにも神経がはりめぐらされています。心臓に障害が起きると、神経機能も影響がおよびます。この検査では、神経(交感神経)の状態を反映するお薬を注射したのちに、15分後と3時間後の2回、心臓を撮像します。 この検査は、脳血流検査と組み合わせることで、認知症の鑑別に使用されることもあります。
所要時間
1回の撮像が最長30分、待機時間もふくめ全体でおよそ3時間30分
朝食は取っていただいて大丈夫です。内服薬は、レセルビン、三環系の抗うつ薬、塩酸ラベタロールというお薬は中止する必要がありますので、主治医にご一報ください。
心筋交感神経シンチグラフィ(123I-MIBG)
心臓に薬剤が集まる程度を画像で評価して、心不全や心筋症における交感神経機能の低下や回復の程度を診断するのに使われます。
正常では、心臓が見えますが、心筋が広く傷害される心筋症や、交感神経機能が障害されるパーキンソン病では心臓が見えなくなります。
また、レビー小体型認知症でも同様にこの薬剤が心臓に集まらなくなります。一方、アルツハイマー病では、心臓の交感神経機能に変化はありません。このため、認知症の鑑別診断の参考にすることができます。
なお、その他の神経疾患、家族性アミロイドーシスによるニューロパチー、多系統萎縮症でも同様に心臓の交感神経機能の低下が知られています。
心筋障害(ピロリン酸)シンチグラフィ(99mTc-PYP)
この検査は、心筋梗塞を起こした部位が壊死していないか確認する検査です。心アミロイドーシスという病気の診断にも用いられます。
障害を起こしている心筋に集まるお薬を注射したのち、3時間後に撮影し、その後心筋の血流を見ることができるお薬を注射し15分後に撮影を行います。
所要時間
1回目の撮影が10分、2回目の撮影が30分ほどかかります。待機時間もふくめ全体でおよそ4時間30分かかります。
朝ごはんは食べていただいて大丈夫です。1回目の注射をしてから検査終了までは絶食とさせていただいております。お水は飲んでいただいて大丈夫です。
正常例では薬の集積がみられませんが、心筋梗塞では梗塞部位に、心アミロイドーシスではアミロイド沈着のある部位への集積があります。
心アミロイドーシスという病気では、アミロイドというたんぱく質が心筋に沈着します。沈着したアミロイドに99mTc-PYPというお薬が集積することで病気を判別します。
また、201Tlというお薬を使って心筋血流の評価も同時に行うことができます。下段の画像のように、心アミロイドーシスでは血流は保たれますが心筋の機能が低下します。