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胆膵疾患の診療について
胆膵疾患
胆石、胆嚢炎・胆管炎の診断・治療、および急性膵炎、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)の 診断および外来診療を行っています。特に胆管炎の内視鏡治療や超音波内視鏡(EUS)を 積極的に行っています。 悪性腫瘍 胆石、胆嚢炎・胆管炎、急性膵炎などの良性疾患から、IPMN、胆管がんや膵がんなどの悪性疾患に至るまで、幅広い疾患の診断、治療を行っています。
- 膵臓の病気:膵がん 膵腫瘍 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) 急性膵炎 慢性膵炎(膵石症)
- 胆管の病気:胆管がん・胆のうがん 胆管結石 胆管炎 閉塞性黄疸
膵がんに対する診断と治療
膵がんは、膵臓に発生する悪性腫瘍です。膵臓は、胃の裏側にある臓器で、腸に消化酵素を分泌したり、血液にホルモンを分泌しています。膵がんのほとんどは「腺がん」という種類です。そのほか内分泌がんやまれな腫瘍もあります。
早期には症状が出にくく、進行してから発見されることが多いため、治療が難しい病気です。
膵がんの診断が疑われる場合、造影剤を使用したCTやMRIなど画像検査を行いますが、確定診断には組織検査が必要です。病状に応じて、超音波内視鏡検査や内視鏡的逆行性膵胆管造影検査で組織の採取を行います。組織学的診断では、採取した組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を確認します。組織の検査は数日の入院が必要です。
膵がん(腺がん)と診断された場合、ステージ(進行度)の診断を行います。膵がんでは一般的ながんのステージ(I期からIV期)の他に、切除可能分類(切除可能、切除可能境界、切除不能)のどれに当てはまるかを考え、治療方針を決めていきます。
膵がんができた場所によっては、膵がんが胆管を閉塞し黄疸が起こることがあります。また、十二指腸が閉塞し食事が食べられなくなる人もいます。閉塞などの症状を治療するために、内視鏡治療(内視鏡的手術)や手術が必要な場合があります。がん診断と並行して、速やかに黄疸や消化管閉塞の治療をおこないます。
また膵がんを発症した場合、痛みを感じる方や、糖尿病を発症したり、もともとある糖尿病が悪化する方もいらっしゃいます。
当院では、検査結果を胆膵の内視鏡の専門医、がんの専門医、肝胆膵外科医などの複数の医師で判断し、ガイドラインや、患者さんの体調や年齢を考慮し、当院での治療方法を提示します。また、診断と同時に黄疸などの症状に対する治療も速やかに行います。また、緩和ケアチームの医師や糖尿病代謝内科の医師、退院支援看護師などと協力のうえ、疼痛の治療、糖尿病の治療だけでなく、退院後の生活の支援も行ってまいります。
膵尾部がんの造影CT検査(黄色い矢印が膵がんです)
閉塞性黄疸に対する内視鏡治療(内視鏡的胆道ステント留置)
閉塞性黄疸とは、胆管ががんなどの原因によってふさがり、黄疸が出現する状態です。胆道閉塞とも言います。胆管は肝臓で作られた胆汁という消化液の通り道です。この胆管ががんによりふさがってしまうと、黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなる)が出現したり、食欲がなくなったり、血液検査で肝臓や胆管の値が上昇したりします。膵がんや胆管がん、他のがんの転移により起こる症状です。
閉塞性黄疸の診断はCTやMRIで行われます。治療は、主に内視鏡治療が行われます。第一に内視鏡的逆行膵胆管造影検査(ERCP)を用いた治療が一般的です。十二指腸から胆管に「ステント」という管を挿入し、ふさがった胆管の流れを確保します。ステントには金属製とプラスチック製があり、患者さんの状態に応じて選択されます。十二指腸からステントが挿入できない場合には、内視鏡的超音波ガイド下胆管ドレナージ(EUS-BD)という方法もあります。EUS-BDは、ERCPが困難な場合に有効な治療です。
胆管結石・胆管炎の治療
胆管結石は、胆管内の結石により胆汁の流れが止まり、腹痛や黄疸をおこす病気です。流れが止まった胆管に感染をおこした場合を「胆管炎」と言います。胆管炎は時に重症な感染症をおこし、高齢の方では胆管炎が原因で亡くなる方もいらっしゃいます。高齢の方では、症状が出にくく、重症になってから来院される方も多いです。
発熱を伴う胆管炎の場合には緊急入院をして速やかな治療が必要です。症状が軽く、鎮痛薬や抗菌薬を使用して一時的によくなった方でも、胆管に結石があると、また症状がぶり返してしまいますので、治療が必要です。
胆管結石はある程度の大きさになると、自然に流れてしまうことは少ないので、主に内視鏡治療が行われます。内視鏡を用いて十二指腸の胆汁の出口(十二指腸乳頭)から胆管にカテーテルを挿入します。十二指腸乳頭は小さい出口ですので、出口を切開し、結石をつかんで除去します。胆管炎を起こしている場合には「ステント」という管を一時的に挿入し、胆汁の流れを改善し、感染症の治療を行ってから改めて結石をとる場合が多いです。
当院では、緊急での診断や内視鏡治療をおこなう体制を整えています。また、他院で年齢や併存疾患のために内視鏡治療は難しいといわれた方でも、ご相談ください。
胆管結石の内視鏡治療(ERCP関連手技)の様子
急性膵炎
膵臓は消化酵素を分泌する重要な臓器です。膵炎は、何らかの原因で、膵臓に炎症が起こり、消化酵素が膵臓そのものを消化してしまうことにより起こります。主な症状としては、上腹部の激しい痛み、吐き気、嘔吐、発熱などが挙げられます。
急性膵炎の原因としては、アルコールの過剰摂取や胆管結石が一般的です。また、中性脂肪が高値の方では膵炎になりやすいといわれています。アルコールの過剰摂取により膵臓に負担がかかり、炎症を引き起こすことがあります。また、胆石性膵炎と言い、胆管結石が十二指腸の出口にはまってしまうと、膵液が流れなくなり、胆石の症状と同時に膵炎を起こすことがあります。
膵炎は、重症になると人工呼吸器管理や透析など、集中治療室での全身管理が必要となる恐れがあります。また、膵炎により腹部の組織が壊死を起こすと重症感染症を引き起こすことがあります。
急性膵炎後の壊死性膵炎の造影CT検査
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)膵のう胞
(IPMN)は、膵管内で粘液を産生する腫瘍で、がんになる可能性があります。IPMNは主に主膵管型と分枝型に分類され、主膵管型はがん化のリスクが高いとされています。
発見契機: IPMNは多くの場合、定期健康診断や他の病気の検査中に偶然発見されます。症状が現れることは少ないですが、膵管の拡張や膵液の流れが悪くなることで、腹痛や背部痛が生じることがあります。
診断方法: IPMNの診断には、腹部超音波検査、造影CT検査、MRI(MRCP)、超音波内視鏡検査(EUS)などが用いられます。これらの検査により、膵管の拡張や嚢胞の存在を確認します。また、腫瘍マーカーであるCA19-9やCEAの上昇も診断の一助となります。
治療の必要性: 治療が必要かどうかは、腫瘍の大きさや拡張度、がん化のリスクによって判断されます。主膵管型IPMNや、分枝型IPMNでも嚢胞が3cm以上の場合、または腫瘍状の結節が見られる場合は、手術が推奨されます。一方、がん化のリスクが低い場合は、定期的な経過観察が行われます。
ガイドライン: 最新のガイドラインでは、IPMNの管理において、明らかな増大傾向やポリープの出現がない場合は経過観察を推奨しています。
分枝型IPMNの写真。左上:膵臓のイラスト 右:MRI(MRCP検査) 左下:超音波内視鏡検査