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消化管疾患の診療について
消化管疾患
【概要】
胃・食道・大腸早期がんの発見はもとより、ピロリ菌感染の診断、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の診断や下痢・血便を呈する疾患の原因同定を行っています。治療面では、早期がんの内視鏡治療を始め、逆流性食道炎、消化性潰瘍、炎症性腸疾患、さまざまな腸炎、大腸憩室出血などの治療も行っています。
【便潜血検査】
便潜血検査が陽性と言われたら
便潜血検査とは便の中に血が混ざっていないかを確認する検査です。普段自覚症状がなくても、便の中に血が混ざる病気、例えば大腸がんや大腸ポリープ、痔核、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)などが隠れている可能性があります。特に食生活の欧米化や肥満などの影響で、日本でも大腸がんの患者さんが増えているため早期発見が重要です。なお便潜血検査が陽性の方のうち大腸がんと診断される割合は2~3%と言われています。
便潜血検査が陽性となったら、大腸内視鏡検査を行うことが推奨されています。この検査では、内視鏡を用いて大腸の内部を直接観察し、出血の原因を特定します。大腸の良性ポリープは一定の期間を経ることでがん化するものがあり予防的な切除が必要です。また、大腸がんもごく初期の段階で見つかれば内視鏡での切除が可能です。
よくあるQ&A
年齢的に外来で大腸内視鏡検査を受けるのが不安です。
血をサラサラにする薬(抗血栓薬・抗凝固薬)を内服しているのでポリープを切除した後の出血が不安です。
→上記の方については入院での検査をご案内しています。
便潜血検査が陽性と言われましたが、特に症状もないので放っておいてもいいですか。
→なるべく早いタイミングでの医療機関の受診をお願いします。上記の通り、自覚症状のない初期の段階で病気を見つけることが大事です。なお、血便/腹痛/便秘などの症状がある場合は次の検診を待たずに医療機関を受診してください。
便潜血検査は毎年受けた方がいいですか。
→40歳以上の方は基本的に毎年受けることが推奨されています。ただし大腸内視鏡検査を受けて何もないと言われた後に、続けて便潜血検査が陽性となることもあります。対応については、担当医とご相談ください。
心配なので、大腸内視鏡検査は毎年やった方がいいですか。
→大腸内視鏡検査で切除したポリープが良性かつ個数が少ない場合、毎年の検査は推奨されていません。早期大腸がんを治療した場合やポリープの種類によっては1年後の検査をご案内させていただきます。
【大腸憩室】
大腸憩室に関連した病気
大腸憩室とは、大腸の内側の壁にできたポケットのことです。通常は無害で治療不要ですが、時に出血や炎症などの問題を引き起こすことがあります。
大腸憩室出血は、大腸憩室からの出血のことを指します。憩室の壁を通る血管が傷つき出血することで、真っ赤な便を認めます。大腸内視鏡検査を行い出血の原因となっている憩室が分かれば、内視鏡用のクリップや結紮バンドを用いて血を止める治療を行います。大腸憩室出血は70~90%が自然に止血するといわれており、治療として絶食による腸管安静を行うことがあります。
大腸憩室炎は、大腸憩室に炎症が生じた状態です。憩室内で細菌が増殖し感染を起こすことで、刺し込むようなお腹の痛みや発熱などの症状を認めます。軽症であれば絶食と抗生剤による治療で改善します。重症例では憩室が破れて大腸の便汁が腹腔内に漏れ出し、膿の塊を作ることがあります。その場合は、外科手術を含めた炎症のコントロールを検討します。また、適切に治療を行った場合でも重症化し憩室が破れることがあり、慎重な経過観察が必要です。
よくあるQ&A
赤い血の混じった便が出たのですが、これは憩室出血ですか。
→憩室出血の他に、痔からの出血、大腸ポリープ/大腸がん、腸管の感染症、炎症性腸疾患など様々な鑑別があります。軽症であれば慌てずに早めの医療機関受診をお願いします。
大腸憩室出血や憩室炎は再発しますか。
→一度治療しても、再発する場合があります。
大腸憩室炎と診断されましたが大腸内視鏡検査を一度も受けたことがありません。
→大腸がんによる炎症ではないかを確認するために、一度大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
【ヘリコバクター・ピロリ菌】
胃の中にピロリ菌がいると言われたら
ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)とは、胃の粘膜に生息している細菌です。ピロリ菌は幼い頃に口から感染します。近年ではピロリ菌の除菌(退治)の普及により感染者は減少傾向にあります。ピロリ菌の感染は萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどを引き起こします。特に胃がんの99%はピロリ菌の感染が原因といわれています。
検査でピロリ菌が陽性と言われたら、除菌前に必ず胃内視鏡検査を行い胃炎の程度や胃がんの有無を調べます。最初の除菌療法(1次除菌)では制酸剤と2種類の抗生物質を7日間内服していただきます。なお、抗生剤(主にアモキシシリン:ペニシリン系、クラリスロマイシン:マクロライド系)のアレルギーがある方は除菌療法を受けられません。正しく内服した場合の成功率は80~90%と言われています。除菌が不成功だった場合は、2次除菌(抗生剤の種類を変更する)を受けることができます。2次除菌により98%の方が除菌成功します。
また除菌が成功すると胃がんのリスクは減少しますが、ゼロになるわけではないので必ず定期的な胃内視鏡検査をお受けください。
よくあるQ&A
ピロリ菌が陽性と言われたので胃内視鏡検査は受けなくてもいいですか。
→胃内視鏡検査を行わないと保険診療で除菌はできません。胃内視鏡検査は苦しそうでハードルが高い、という場合は当院では苦痛を軽減するための鎮静剤(一時的に眠くなる薬)を検査時に使用できます。担当医とご相談ください。
2次除菌も不成功でした、どうすればいいですか。
→ご希望があれば当院では3次除菌のご案内も可能です。ただし、保険診療では行えないため自費診療となります。(約3万円の自己負担)
また、同日に保険診療(他科受診や薬の処方など)を受けることはできません。
ピロリ菌を除菌してから胸焼けの症状がでました。
→ピロリ菌の除菌が成功した後に逆流性食道炎が悪化する方がいます。低下していた胃酸の分泌が正常化することで起こりますが、ほとんどが一時的なもので治療が必要となるケースはまれです。
【胃・十二指腸潰瘍】
胃・十二指腸潰瘍が引き起こす症状
胃・十二指腸潰瘍とは、胃酸の強い刺激によって胃・十二指腸の粘膜が傷つき剥がれ落ちた状態のことです。みぞおちが痛む、便が黒っぽい・血が混ざっている、血を吐いた、ふらつくなどの症状をきっかけに診断されることが多いです。胃酸は食べ物の消化に必要であり、通常は胃酸によって粘膜が傷つくことはありません。ピロリ菌の感染、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:痛み止めとして使用されることが多い)の内服、過度の飲酒やストレスなどによる負担で粘膜のバリア機能が低下して生じます。
潰瘍ができることで、本来粘膜の下で保護されていた血管が露出し、出血を起こすことがあります。特に血をサラサラにする薬(抗血栓・抗凝固薬)を内服されている方は、注意が必要です。太い血管が傷つくと、血圧が低下してショック状態に陥り、輸血が必要となることがあります。この場合は、まず全身の状態を整えてから胃内視鏡検査を行い、可能であれば内視鏡で止血治療をします。処置の刺激でさらに出血がひどくなる場合や、腸の壁に穴が空いてしまうこともあります。また血管の太さによってはカテーテル治療(原因となっている血管をカテーテルで見つけ出し血流を遮断して治療)を選択することもあります。
潰瘍が深いと胃や十二指腸の壁に穴が開き、消化液や食べたものがお腹の中のスペースに漏れ出して強い炎症を引き起こします。その場合は外科手術を含めた対応を検討します。
よくあるQ&A
最近、みぞおちが痛むのですが潰瘍のせいですか。
→胃内視鏡検査を行い詳しく調べましょう。胃のあたりの不快感や痛みの原因になる病気は胃・十二指腸潰瘍の他に、がん・機能性ディスペプシア・逆流性食道炎など様々あります。
潰瘍はどうやって治しますか。
→胃薬を内服することで治療します。同時に原因(ピロリ菌・NSAIDsの内服・過度な飲酒やストレスなど)の除去も大事です。
潰瘍の原因がピロリ菌と分かりました、どうすればいいですか。
→除菌治療を行います。潰瘍を発症した方は、除菌治療を行わないと1年以内に胃潰瘍で60%、十二指腸潰瘍で85%の方が再発してしまいます。