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硬性気管支鏡・気道ステント
硬性気管支鏡・気道ステント留置術の相談窓口・ご紹介窓口を開設しました。
硬性気管支鏡とは
気管支鏡にはファイバースコープという軟性気管支鏡と金属の筒でできた硬性気管支鏡があります。日本で行われている気管支鏡のほとんどは軟性気管支鏡で、軟性気管支鏡は主に検査に使われています。その一方で、気管支鏡での治療をする場合、ファイバースコープではなく、硬性気管支鏡で行ったほうが安全であると言われています。つまり、硬性気管支鏡は治療に用いられる気管支鏡です。
気管支鏡を用いた治療とは
それでは、気管支鏡を用いた治療とはどの様なものでしょう?
我々は24時間、息をして生活しています。ところが、空気の通り道(気道)に、急に、時には徐々に、物が詰まったことによりで「息ができなくなり、苦しくなる」という状態が起きることがあり、その場合に、治療の対象になります。
ただし、気道がせまくなること以外の原因で息が苦しくなった場合は硬性気管支鏡で治療することはできません。 気道が塞がりかけたり、もしくは一部だけ塞がったりして、将来、呼吸困難が生じたり窒息しそうな状態の時に、硬性気管支鏡での治療の対象となります。
気道を塞いで、窒息しそうになる原因はいろいろなものがありますが、例えば
- 気管・気管支に異物が入ってしまって苦しい場合
- 気管・気管支に瘡蓋(かさぶた)ができて苦しい場合
- 気管・気管支に腫瘍が顔を出してきて苦しくなってきている場合
などが主な原因です。
硬性気管鏡(DumonBronchoscope set)
気管支鏡を用いた治療の概要
気道を塞ぐ原因が見つかった場合、それを除去することができれば、呼吸の苦しさが改善することになります。ここでも、人間が24時間呼吸をして生活していることが関係して、硬性気管支鏡を用いた以下の手技は全て全身麻酔で行うことが必要となります。
障害物を取り除く方法は異物などなら、鉗子というマジックハンドで取って来ればそれで解決しますが、気管・気管支に瘡蓋(かさぶた)ができて、気管・気管支が細くなってしまっている場合は、その場所を風船のようなもので広げることで、呼吸の苦しさが軽減ないしは取れてきます。気管・気管支に「がん」のような腫瘍が顔を出して気管・気管支を塞ぎそうになった場合は切ったり焼いたりと様々な方法で顔を出している腫瘍を取り除きます。特に腫瘍の場合は、顔を出している腫瘍を取りの除くだけでは、その後、再び顔を出して、同じように気道が狭くなってしまうので、それを予防なしは遅らせるために気管・気管支に内貼りとして「ステント」と呼ばれる筒状の医療器具を置いてきます。この方法を「気道ステント留置術」と呼びます。
これらの方法は全身麻酔下で硬性気管支鏡という道具を使用することにより、安全に行えるようになります。
ステントを入れる場合は、状況や状態により使う材質など適切なものを選択することになりますが(シリコン、金属、 金属+樹脂などいろいろなものがあります)、必要なくなった場合などに抜けるなどの利点があるシリコン製のステントを用いることが多くなります。
より詳しく知りたい方や、医療従事者の方は、下記の日本呼吸器内視鏡学会の指針もご参照ください。
http://www.jsre.org/medical/1609_stent.pdf
上記のことを踏まえて、以下に硬性気管支鏡・気道ステント留置術のもう少し詳しい適応と具体的な方法をご説明します。
気道ステントの対象になる主な疾患・状態
- ほかの手段では同様の効果が得られそうもないとき
- 「がん」の治療前・治療中に、今にも閉じてしまいそうな危険な空気の通り道があるとき(抗がん剤や放射線治療に先立って処置を行います、治療が奏効し不要になればステントを抜いてしまいます。)
- 「がん」などで、食道と気管の間などに穴が開いてしまい、塞がないといけないとき
- 「がん」に対して、今まで抗がん療法を充分に実施して来たが、もう抗がん療法では小さくして状態の改善に繋がらない状態ではあるが、空気の通り道に癌があるために苦しく辛いとき
- 良性疾患で、どうしても苦しさを和らげたいとき(ただし、基本的には良性疾患は気道ステント適応外ですが、硬性気管支鏡で細くなった気管・気管支を広げることは可能です。)
※上記のいずれかに該当する場合でも、技術的に困難な場合や、行っても充分な改善が見込めない場合などには、手術自体のリスクも考慮して、お薦めできない場合がありますので、ご相談ください。
その他の方法
体の外から放射線を照射したり、気管の中からレーザーやプラズマで処理したり、高周波の装置で焼き切ったり、凍らせて削り取ったりと、様々な方法があります。放射線以外の方法については、軟性気管支鏡だけでも可能な処置もありますが、多くの場合、手技の確実性と患者さんの手技中の辛さ、安全性の点から、硬性気管支鏡をお薦めすることが多いと考えられます。
手術の実際
手術といっても比較的規模の小さなものですが、全身麻酔で行うリスクと、処置自体に感染や出血、処置自体による窒息などのリスクがあります。ほかの手術や処置と同様ですが、慎重に行っても、一定の割合で死に至るような合併症が避けられないと言われています。まず、手術が本当に必要か、本当に可能かの判断を、丁寧・慎重に行うことになります。一般的に、手術の前には、CT、心電図、呼吸機能検査、血液検査など様々な検査が必要です。
手術の際には、一週間程度の入院となる場合が一般的です。手術のあとの治療については、病気や状態によってさまざまですが、入院施設のある病院等からのご紹介であれば基本的には、ご紹介元での今後の治療を継続していただくことになると思われます。
おわりに
ほかにも硬性気管支鏡およびそれによる気道ステント留置術を行っている施設がありますが、関東圏には実施する施設が少ないのが現状です。適応がありそうな患者さんがおられましたら是非ご相談ください。
本件に関するお問合せ先
国立国際医療研究センター病院
代表:03-3202-7181
呼吸器内科外来及び呼吸器内科
問い合わせ先医師:橋本理生、竹田雄一郎