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慢性呼吸不全と在宅酸素療法、在宅人工呼吸器療法

慢性呼吸不全

肺結核の後遺症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎では疾患の進行に伴い慢性的な低酸素血症(動脈血中の酸素分圧が低下する状態)が出現するようになります。この状態を慢性呼吸不全と呼びます。

心不全の原因に

低酸素血症が続くと肺の血管が収縮し、その結果、心臓に慢性的な負担がかかり心不全の原因となります。このような場合、症状(呼吸困難)の軽減、QOLの向上、生命予後の改善のために長期にわたり酸素吸入療法を継続する必要性が生じます。

在宅酸素療法

在宅、あるいは施設などで行う酸素療法を在宅酸素療法と呼びます。慢性呼吸不全では、在宅酸素療法により生命予後が改善されることが明らかとなっています。在宅酸素療法が普及し始めてから約25年が経過しますが、現在、全国で10万人あまりの患者さんが在宅酸素療法を行っています。

酸素供給装置

病院と異なり自宅では特別な酸素供給装置が必要となります。現在使用されている酸素供給装置は

  1. 空気中から酸素を集め、約90%の酸素を作り出すことのできる酸素濃縮装置
  2. 液化酸素から気化してくる酸素を必要に応じて使用する液体酸素システム

の2種類です。酸素供給装置から伸びるプラスチック製のチューブを鼻にかけて酸素を吸入します。鼻の周囲では酸素濃度が高くなっているため、火の取り扱いは慎重に行う必要があります。

非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)

在宅酸素療法のみで十分な酸素が供給できない、あるいは体内に二酸化炭素が貯留してしまう場合、人工呼吸器が必要となります。もともと在宅人工呼吸器療法は、長期間状態が安定している神経筋疾患で気管切開をして行われてきましたが、現在ではマスクを用いて行う非侵襲的陽圧換気療法が急速に普及しています。NPPVは肺結核後遺症や脊椎後側わん症などの拘束性胸郭疾患の生命予後やQOLの改善をもたらすことがわかっています。

ASV(adaptive servo- ventilation)

近年、患者さんの呼吸パターンを学習して、自動的に適切な陽圧で呼吸をサポートする、非侵襲的陽圧換気の一種であるASVが登場しました。心不全患者においてASV導入により、心機能や自覚症状を改善することが報告されています。

そのため、我々としては呼吸不全患者において、心不全・循環不全を合併している患者さんには、入院中に積極的に導入し、必要に応じて在宅への移行も行っております。

BiPAP AVAPS/BiPAP A40/iVAPS

また、新たの機能として、設定したIPAP MinとIPAP Maxの間で、患者さんが必要とする換気量 (Target Tidal Volume)を維持するのに必要な圧力レベルを自動調整が可能なBiPAP AVAPS/BiPAP A40/iVAPSの登場により、換気が不安定な患者さん、呼吸不全の強い患者さんなど入院中のある程度呼吸が安定してきた治療急性期の回復期より導入し、その後の在宅治療に移行しております。

診療実績

当センターでは、平成26年5月末の時点で122名の患者さんが在宅酸素療法を、26名の患者さんが在宅人工呼吸療法を受けています。(NPPV8人、ASV13人、CPAP5人)