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疲れやすさ・性のこと・ホットフラッシュ・こころのこと
疲れやすさ
がんの治療は心身に負担をかけますので、疲れやすくなることは自然なことです。治療が終了して半年から1年くらいで症状が軽くなってくることが多いのですが、治療の種類や内容により、場合によっては症状が数年間続く方もいます。「疲れやすさ」には、一日中眠たい、集中力が落ちる、長時間家事ができない、神経過敏になる、といった症状も含まれます。こうした症状は治療そのものだけではなく、生活リズムや環境の変化、不安やストレス、抑うつといったさまざまなことが原因となりえます。疲れやすいと感じた場合は、睡眠や休養をしっかりとる、バランスのよい食事や適度な運動を取り入れる、禁煙する、など一度ライフスタイルを見直してみましょう。ヨガや指圧がよいという研究結果もあります。
また、なかには内服している薬が原因となっていたり、貧血、肺や心臓の疾患、腎臓や肝臓の機能低下、甲状腺ホルモンの分泌低下、抑うつなどが原因となっていたりすることもあります。このような場合には医学的対応が必要となることもありますので、疲れやすさによって日常生活に支障をきたしている場合には、ぜひ医療スタッフに相談してください。
性のこと
がん治療後の性の問題は、治療の副作用による性腺機能の変化、アピアランスの変化、そしてそれらに起因する人間関係の変化、などさまざまな側面を含んでいます。性機能の変化に関する研究によると、若年女性のがん経験者の3人に2人が性機能障害を経験していると報告されています。例えば、セックスへの関心がなくなる、オーガニズムに達することが難しい、性生活における満足度が低下する、外陰部の不快感や膣の乾燥など、その経験は多岐に渡ります。性は生活の中の大切な一部です。話しにくいことかもしれませんが、困りごとがあれば医療スタッフや専門の相談窓口に相談してみてもよいかもしれません。
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認定NPO法人キャンサーネットジャパン もっと知ってほしいがんと生活のこと
https://www.cancernet.jp/seikatsu/
ホットフラッシュ
40歳になる前に閉経することを早発閉経といいますが、一部の抗がん剤にも卵巣機能に影響を及ぼすことによる早発閉経のリスクがあります。このように治療の影響で早発閉経となると、体内の女性ホルモンの量が急激に減り、更年期障害と同じような症状が出ることがあります。また、閉経前の方がタモキシフェンを内服すると、50~70%の方がホットフラッシュという、のぼせや発汗などの症状を経験します。ホットフラッシュは、寝汗でパジャマを何度も替えなければならないレベルになると、眠りに影響を及ぼしたり、集中力が低下したりと、生活の質に影響します。鍼治療や運動で血行をよくすると、症状が軽くなることがあります。また、辛い食事やカフェイン、お酒を避けるなど食事のスタイルを変えるのも効果があるかもしれません。症状がつらいときにはがまんせずに医療スタッフにご相談ください。
こころのこと
がん治療は、からだや暮らしに大きなストレスと変化を与え、こころにも負担がかかります。こころへの影響は自分では気づきにくいことも多いですが、乳がん経験者のうち約20%の方が抑うつを経験しているといわれています。自分でなんとかしようとしたり、がまんしすぎたりすると、こころとからだにより大きな負担がかかることもあります。つらい気持ちのときは、医療スタッフに話してみましょう。専門家によるカウンセリングや薬の処方が役に立つことも少なくありません。
参考資料:
J Clin Oncol. 2018; 36: 2647-2655.
J Clin Oncol. 2014; 32: 1840-1850.
Asian Pac J Cancer Prev. 2013; 14(4): 2649-2656.
CA Cancer J Clin. 2016 Jan-Feb; 66(1): 43-73.