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食道がんの化学療法について
化学療法とは、抗がん薬を体に投与することでがん細胞を縮小させる治療です。抗がん薬は血液の流れに乗って全身に行き渡るため、手術では切除できない部分や、画像では見えない微小ながんにも効果を期待することができます。
1. 抗がん薬の内容
食道がんに用いられる抗がん薬には以下の3種類があり、いずれも点滴で投与する薬剤です。
- フルオロウラシル(5-FU)
- シスプラチン
- ドセタキセル(タキソテール)、パクリタキセル(タキソール)
- ニボルマブ(オプチーボ) 免疫療法
上記の薬剤の中で、食道がんに対する標準的な化学療法はシスプラチンとフルオロウラシルの併用療法とされています。また3剤同時(シスプラチンとフルオロウラシルとドセタキセル)の術前化学療法も行なっています。
シスプラチンを治療1日目に投与し、フルオロウラシルを1日目から5日間かけて持続的に点滴投与します(術前化学療法法の際は4日間)。また吐き気止めの点滴や、抗がん薬(特にシスプラチン)による腎臓の障害を防ぐための点滴(1日に2500ml~3000ml)も同時に行います。
抗がん薬の投与は入院中に行いますが、投与後副作用の問題がなければ1週間程度で退院し、投与後3週間ほどの休み(休薬期間)をおいて体力の回復を待ちます。3−4週間の(21-28日間)という期間を1サイクルとし、定期的に検査で治療効果を判定し、有効であれば繰り返すというスケジュールで行います。
がんの治療法として、免疫療法が近年注目されています。免疫療法は、人間が本来持っている免疫機能を強化ないし回復することで、がんの増殖を抑制することを目的とした治療です。現在効果が示されている免疫療法は、がん細胞が免疫機能にかけているブレーキを邪魔する作用を持つ“免疫チェックポイント阻害剤”として、一部の薬剤が食道がんにも保険診療で使用されるようになりました。食道がんでは、ニボルマブという免疫チェックポイント阻害剤の有効性が示され、すでに使用されています。免疫チェックポイント阻害剤にも、特徴的な副作用がありますので注意が必要です。
2. 抗がん薬の副作用
抗がん薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすため、副作用が生じます。特に影響を受けやすい部位は、口腔・胃・腸などの粘膜、骨髄、毛髪など、新陳代謝の盛んな部分です。また副作用は、抗がん薬の種類によって大きく異なります。
抗がん薬の一般的な副作用
- 感染に対する抵抗力の低下(白血球減少)
- 吐き気、嘔吐、下痢
- 食欲不振、倦怠感(からだがだるい)
- 口内炎
- 脱毛
- 手足のしびれ
現在では抗がん薬の副作用による苦痛を軽くする方法も確立されてきていますので、一昔前よりは治療による負担が軽減されてきていますのでご安心ください。しかし副作用が著しい場合は、薬剤の減量や変更、抗がん薬治療の中止が必要になることもあります。
3. 術前化学療法
食道がんは難治がんの1つです。そこで治療成績をあげるために進行した食道がん(UICC-ステージIB-III)の患者さんには手術前に抗がん薬治療を行っています。この方法は「術前化学療法」と呼ばれています。患者さんの状態や進行度により、FP(シスプラチンとフルオロウラシル)療法やDCF(シスプラチンとフルオロウラシルとドセタキセル)療法を使い分けています。詳細は担当医にお尋ね下さい。
手術で取りきれるがんの場合でも、CT検査では映らない微小ながんが全身に広がっていることがあり、これらが術後の再発に影響していると考えられています。この微小ながんを手術前に叩くことによって、術後の再発を防ぐことが目的です。
さらに、手術前に行うメリットとして、術後であれば体力の落ちた状態で耐えきれない抗がん薬の副作用も、術前の体力のある時期には耐えやすく、最後まで抗がん薬治療が行えることです。また、抗がん薬の効果が目に見える形で評価できるため、手術後の再発・転移に対し抗がん薬を使用する場合に、その患者さんに適した抗がん薬を選択することができます。化学療法が終了し、体力が回復したあとに、手術が行われます。
4. 術後化学療法
原則的には手術後に抗がん薬治療は行っておりません。ただし、手術前にはステージ1と考えられていた患者さんが手術後の検査の結果、ステージII以上と判明した場合には、手術後に抗がん薬治療を勧めることがあります。この治療法の実施は、年齢や術後の体力も考慮し、御相談の上で決定します。