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糖尿病内分泌代謝科「先進1型糖尿病外来」のご案内
はじめに
1型糖尿病とは、「体内でインスリンを分泌する唯一の細胞である膵β細胞が何らかの理由により破壊され、インスリン分泌が枯渇して発症する糖尿病」と定義されています。1型糖尿病は、その進行の様式によって、「劇症」、「急性発症」、そして「緩徐進行」に分類されます。
急性発症1型糖尿病
自己免疫機序によってインスリンを分泌する膵β細胞が壊されてしまい、週単位から月単位で高血糖に伴う口渇、多飲、多尿の症状が出現します。血液検査では膵島関連自己抗体が陽性になります。自己抗体が認められなくてもインスリン分泌の欠乏が認められれば診断となります。
緩徐進行1型糖尿病
インスリン分泌が年単位で緩やかに低下します。すぐにインスリンが必要な状態になりませんが、早い段階でインスリン投与を開始することでインスリン分泌能低下の進行を遅らせることが報告されています(Tokyo study、Annals of the New York Academy of Sciences. 2003)。経過中のどこかの時点で膵島関連自己抗体陽性を認めます。
劇症1型糖尿病
ウイルス感染などをきっかけに、わずか数日間で膵β細胞が壊されてしまいます。そのため、1週間前後という急な経過で「糖尿病ケトアシドーシス」と呼ばれるインスリンが枯渇するために起こる急性合併症に陥ります。速やかなインスリン治療の開始が欠かせません。劇症1型糖尿病では、原則として膵島関連自己抗体を認めません。
治療の選択肢
1921年、カナダのバンティングとベストがインスリンを発見しました。奇跡の薬と言われたいわれたインスリンは、20世紀最大の発見の一つです。今では様々な特徴を持つインスリン製剤が使用可能となり、患者さんの状態やライフスタイルに合わせて選択することができます。1日何回かインスリン注射を行う方法とインスリンポンプを使う方法があります(図1)。必要なインスリンの量は血糖値の推移を見ながら決めます。その方法としては、自己血糖測定器による指先の穿刺による血糖測定に加えて、持続血糖測定器(Continuous Glucose Monitoring, CGM)の進歩で様々な機器が使えるようになりました(図2)。先進1型糖尿病外来では国内で使用可能な機器をそろえて、患者さん一人一人にベストな選択ができる診療体制を整えています。導入方法としては、入院、外来のいずれも対応可能です。
臨床試験
現在、J-DREAMS(診療録直結型全国糖尿病データベース事業)を活用して、国内では初めてとなる成人1型糖尿病のデータべースを構築し、1型糖尿病の疫学調査を行っています。また、患者さんのご協力の下で、様々な臨床試験に取り組んでいます。詳細はこちらをご参照下さい。これらの貴重なデータの解析により、1型糖尿病診療の向上を目指しています。
膵島移植
1型糖尿病が根治可能な疾患になることを願ってこれまで膵島移植プロジェクトを進めてきました。詳細はこちらをご参照下さい。臓器提供者の膵臓からインスリンを作る細胞の塊である「膵島」を単離し、患者さんの肝臓内に点滴で細胞を移植するという方法です。拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を継続して内服する必要があり、また、完全にインスリンが必要でなくなることはまだ難しいですが、患者さんにとっての血糖管理の負担は大きく軽減されています。膵島移植は2020年に保険収載されました。 膵島移植は2020年に保険収載され、現在、膵島移植を希望される方のレシピエント登録を受け付けています。1型糖尿病が根治可能な疾患となるよう、取り組みを継続していきます。
最後に
毎日のインスリンの使用は、1型糖尿病患者さんにとっては「治療」というより「生活」そのものです。1型糖尿病をもっていても健常人と何ら変わらない生活ができることを実感して頂けることを第一の目標として、医療スタッフ全員で患者さんとともに歩んでいきたいと考えています。
当院では1型糖尿病患者さんの患者会を行っています。日本糖尿病協会に糖尿病「友の会」として加入し、患者さんとそのご家族、医師、看護師、栄養士をはじめとする医療スタッフで作られている会です。患者会では、1型糖尿病を取り巻く最新の医療機器や研究などについて情報提供させていただいたり、普段あまり話せていないことや困っていることなどを相談していただいたり、患者さん同士の交流や情報交換を行っていくことを目的としています。ご興味のある方がおられましたら、お気軽に医師、看護師にお声がけください。
- 年会費 3000円
- 月刊誌「糖尿病ライフ・さかえ」(日本糖尿病協会編集)配布
- 連絡先:国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝内科 代表: 03-3202-7181
- 医師 小谷紀子 nkodani@hosp.ncgm.go.jp