トップページ > 診療科・部門 > 診療科(内科系) > 糖尿病内分泌代謝科 > 診療実績
診療実績
概要
当科は糖尿病、代謝、内分泌領域の総合的な専門家として、それぞれの領域の症例数が多く、また、治療が困難な症例を多くお受けしています。また、重点的に取り組むべき領域について「先進1型糖尿病外来」、「内分泌外来」、「糖尿病・肥満外来」の専門外来を設置しています。
入院実績(2023年度)
入院患者数(人) | 313 |
---|---|
1日平均在院患者数(人) | 10.2 |
平均在院日数(日) | 11.5 |
糖尿病148名(1型糖尿病16名、2型糖尿病86名、高血糖昏睡29名、その他17名)、内分泌疾患74名(下垂体疾患9名、甲状腺疾患8名、副腎疾患(褐色細胞腫除く)35名、褐色細胞腫8名、その他14名)、低血糖症7名、肥満症1名、電解質異常6名、その他77名
外来実績(2023年度)
外来患者総数(延べ数) | 23,493 |
---|---|
1日平均外来患者数(人) | 96.3 |
年間の新患総数(人) | 377 |
新患率(%) | 1.6 |
再診(人) | 23,116 |
国際医療協力
近年、とくにアジア諸国等の発展途上国では急速に糖尿病等の生活習慣病患者数が増加しており、世界保健期間(WHO)の2012年の年次報告では、世界的な健康増進対策の鍵として「心血管病」を挙げています。途上国においては従来からの栄養不良・感染症の問題とともに,糖尿病•循環器病等の非感染性疾患(NCD)の問題に直面しており、これは、経済成長による生活習慣や社会環境の急激な変化に伴い、「心血管病」の主要な危険因子である高血圧や糖尿病が増加していることが原因です。そこで、その糖尿病等の生活習慣病の実態を把握して,適切な介入戦略を実施することを目的に、ベトナム国ハノイ市のバクマイ病院と共同研究を行っています。
生活習慣病の介入戦略の検討のため、1)ハノイ市の中学校を対象に、学校単位での生活習慣病予防プログラムを実施しました。肥満を悪化させる要因を解析し、プログラムについての効果などの結果についても現在検討中です。また、2)ベトナム人における内臓脂肪の影響を調べるために、バクマイ病院の患者さんを対象に糖尿病や心血管疾患と肥満との関係を解析中です。これらの結果を踏まえて、地域における肥満・生活習慣病予防対策について具体的に検討を行う予定です。
研究
当科では、糖尿病研究センターや糖尿病情報センターと協力して以下のような多施設共同大規模臨床研究に取り組んでいます。
- J-DREAMS(診療録直結型全国糖尿病データベース事業)
本邦では電子カルテの普及が進み、医療・介護情報の電子化、標準化が進行中です。多施設から電子化で多数症例の情報を効率的効果的に集約し、日本人を代表するデータベースとして欧米並みに共用できる研究リソースシステムの構築が必要となっています。現在、医療情報の標準化が急速に進んできており、SS-MIX2 と呼ばれる新標準化ストレージ仕様が医療情報の蓄積・管理の標準的な仕様となってきています。
本研究では、梶尾診療科長が主任研究者となり、厚生労働科学研究委託費(現・AMED 研究委託費)によって平成26年度から3年計画で、SS-MIX2 を利用して、医療機関のデータベースの統合によって多くの糖尿病症例のデータ登録を可能とする臨床情報収集システムの開発を行いました。平成27年度には日本糖尿病学会との共同事業として位置づけられ、当センター内に糖尿病クラウドセンターを設置し、症例登録を開始しました。平成29年度から、本事業は糖尿病情報センターが中心となり(事務局長:大杉糖尿病情報センター長)、植木糖尿病研究センター長が代表となりました。2020年9月から研究代表者を大杉糖尿病情報センター長が務めています。
2022年3月までに、68施設の参加により、約7万人余りの症例登録を得ることができました。また、喫煙や腎症の入力項目の充実や、フレイル・サルコペニアの入力項目を追加しました。現在、研究のために多疾患・他分野との協働を積極的に進めています。 - TIDE-J(日本人1型糖尿病の包括的データベースの構築に関する研究)
日本人1型糖尿病は3亜型に分類され、その臨床像は欧米とは異なっています。本研究は、日本人に特異的な1型糖尿病の病態や臨床像を明らかにし、根治療法を開発するうえで必要な情報を得るために、長期的視野に立った日本で初めてのプロジェクトとして、日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会と当センターとが密に共同・連携して、遺伝的背景の解明をすすめるとともに、遺伝情報と経時的臨床情報・生体試料を統合した日本ではじめての本格的データベースの確立を目指すものです。
本研究は、糖尿病研究センターにおける重点研究の分担課題のひとつとして開始され、平成25年度より、開発研究として引き継がれています(研究代表者;梶尾糖尿病内分泌代謝科診療科長)。現在、当センターに事務局を設置し、19施設の共同研究として、2021年度末までに、333症例(急性発症1型171症例、緩徐進行1型116症例、劇症1型46症例)が登録され、データが継時的に収集されています。 - PRISM-J(IoT活用による糖尿病重症化予防法の開発を目指した研究)
生活習慣病の改善には、いかに効果的に健康的な食習慣や運動習慣などを実践できるように自分自身の行動を変化させ(行動変容)、それを続けていけるか(自己管理)が最も重要ですが、日々の食習慣や運動習慣などの情報を収集する手段として、IoT(モノのインターネット)が近年注目されています。
本研究は植木糖尿病研究センター長が研究代表者となり、日本糖尿病学会の全面的な支援のもと、ウェアラブル端末を用いて、日々の生活習慣情報(活動量、体重、血圧等)を収集し、それをもとに、スマートフォンのアプリケーションで患者さんに応援や注意喚起のメッセージを送り、糖尿病患者さんの行動変容や自己管理力の向上を介した血糖コントロールの改善を検証するH29年度(2017年度)から3年計画の多施設共同無作為化非盲検群間比較試験です。2021年度は成果について検証しました。 - ACPA-J(難治性副腎疾患の診療の質向上と病態解明に関する研究)
副腎腫瘍性疾患はその多くが良性腫瘍であり、診療に際しては腫瘍そのものによる局所的影響よりホルモン過剰による高血圧、糖脂質代謝、骨代謝異常などの全身的な影響が問題となることが多いです。これまでにも厚生労働省研究班による全国調査が施行されていますが、本邦での診療実態や予後について明らかになっていない点は多くあります。治療面では世界的に腫瘍摘出術以外にホルモン過剰産生に対する特異的治療法は確立されていません。その稀少性ゆえに、診療水準向上のためのエビデンス構築と病因・病態の解明には多施設共同研究体制と継続性のある疾患レジストリが必要です。
本研究は当科の田辺医長が研究代表となり、新規の診断法・治療薬の開発、診断基準やガイドライン作成に資する研究の推進を目的として、多施設共同疾患レジストリ、データベース構築を行っています。対象疾患は褐色細胞腫(PPGL)、クッシング・サブクリニカルクッシング症候群(CS・SCS)、ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成(BMAH)、副腎皮質癌(ACC)、非機能性副腎腫瘍(NF)であり、2021年度末までにPPGL 242例、CS・SCS 387例、BMAH 45例、ACC 60例、NF 625例の計1359例が登録され、重要度の高い主要クリニカル・クエスチョンに対する解析が行われています。