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ファブリー病について
ファブリー病はグロボトリアオシルセラミド(GL-3)という糖脂質を体の中で分解する酵素(α-ガラクトシダーゼ/α-GAL)の働きが弱い、あるいは酵素がないために、 GL-3が分解できず、体にたまる病気で、全身にさまざまな症状がみられます。
症状については男性と女性で症状の出方が異なる点もファブリー病の特徴の1つです。
男性は小児または成人期に症状が現れ、小児期から症状が現れる古典型と、心臓や腎臓などの臓器症状から現れる亜型<あがた>にわけられます。女性は男性と同じような症状が出る人から、一部の症状のみの人までさまざまです。
ファブリー病が男性と女性で症状の出方が異なるのは遺伝子の変化が関与しています。
(lysolife ファブリー病HP ファブリー病の理解のためにより)
ファブリー病はとてもまれな病気で、 以前は欧米人男性の場合、患者さんは4万人に1人いるといわれていましたが、国内で行った新生児スクリーニングの結果から7,057人に1人という結果なども含め以前考えられていたより高い頻度で患者さんが認められることが報告されています。
ファブリー病のように、体の中の細胞(ライソゾーム)に分解できないものがたまってしまう病気は50種類以上あり、「ライソゾーム病」と呼ばれています。
症状について
症状としては、子どものときに手足の痛みや、汗をかきにくい、発疹といった症状が現れることや、大人になってから心臓の病気、腎不全などの病気が現れることがあります。
ファブリー病が原因の腎障害は、糸球体上皮細胞、尿細管上皮細胞にGb3が蓄積することにより、たんぱく尿や糸球体濾過量(GFR)が低下していき腎不全になった結果、透析治療や腎移植が必要になることもあります。
症状の現れる時期や種類、程度は人によって異なりますので症状が進行する前の早期の診断が重要になります。
(lysolife ファブリー病HPより)
ファブリー病の診断について
ファブリー病が疑われる症状があるとき、男性は、酵素活性検査でα-ガラクトシダーゼの活性なしまたは活性が低い場合にファブリー病と診断されます。女性は、酵素活性の低下がみられなくても、ファブリー病ではないと断定できないため、遺伝子検査で確定診断が行われます。
(Laney DA,et al:J Genet Couns2013:22:555-564)
(ファブリー病診療ガイドライン2020)
症状の確認
ファブリー病特有の症状を調べます。特に、手足の痛みや、汗をかかない・かきにくい、皮膚の赤い発疹、心肥大などの症状や腎障害の場合は尿検査によるたんぱく尿やマルベリーの検出、腎生検によるゼブラボディーが認められる場合は、ファブリー病が強く疑われます。
酵素活性測定
血液検査で、GL-3を分解する酵素(α-ガラクトシダーゼ)の働きの程度を調べます。男性は、酵素が不足している、あるいは働きが弱い場合、ほとんどの人が診断できます。女性は、酵素の働きだけでははっきりわからない場合があるため、遺伝子検査やそのほかの検査を行います。
遺伝検査
必要に応じて、GL-3を分解する酵素(α-ガラクトシダーゼ)をつくる遺伝子の変化があるかどうかを調べます。女性の場合は疑われる症状、たまっているGL-3の量、遺伝子の変化があるかどうかの結果を総合的に検討し、確定診断が行われます。
ファブリー病の治療について
ファブリー病の治療として、酵素補充療法とシャペロン療法があり、その他は症状に合わせた対処療法となります。
酵素補充療法
現在の主な治療法は、不足しているα‐ガラクトシダーゼ(α-GAL)酵素を補充する「酵素補充療法」です。α-GAL酵素を点滴によって体の中に補充することで、臓器の細胞内に蓄積したグロボトリアオシルセラミド(GL-3)が分解され、症状の進行を抑えることができます。
(lysolife ファブリー病HPより)
シャペロン療法
シャペロン療法は働きが悪い酵素α-ガラクトシダーゼ(α-GAL)の構造を安定化させ、酵素としての働きをサポートし、GL-3をためずに分解できるようにする治療法です。2日に1回、飲み薬を服用します。全く酵素ができない場合やもともと酵素活性がない場合には効果がないため、投与前に患者さんの遺伝子の変化を調べる必要があります。
対処療法
腎機能障害の場合、たんぱく尿を抑えるために、減塩やたんぱく質制限などの食事療法や糸球体保護のためにACE阻害薬やARBを服用することもあります。さらに進行し腎不全を起こした場合は、透析や腎移植などが行われます。また、腎臓病は動脈硬化のリスクを高めると言われているため、脂質の代謝をコントロールする飲み薬が処方されることもあります。
ファブリー病を含む「ライソゾーム病」 は、国の社会保障制度で、「指定難病」および「小児慢性特定疾病(18歳未満)」に指定され、医療費助成制度等の対象となっていますので、助成費制度について詳しく説明を受けたい場合は当院のソーシャルワーカー、医事課、医師などにお気軽に相談ください。
関連ホームページ
- 全国ファブリー病患者と家族の会 http://www.fabrynet.jp/
- 難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/
- ライソゾーム病の症状や治療に関する情報サイト・ライソライフ https://www.lysolife.jp/