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循環器内科
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冠動脈治療センターのご紹介

 狭心症、心筋梗塞といった冠動脈疾患は、糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病に起因する動脈硬化が主な原因で発症します。全身の血管の動脈硬化の一病変としての冠動脈疾患を早期に評価し、必要に応じて治療介入を行うことは重症化を予防する上で非常に大切です。当センターではCT(コンピューター断層撮影)、MRI(核磁気共鳴法)、核医学検査などを用いた冠動脈の画像診断が近隣かかりつけ医とシームレスに対応可能です。
 狭心症に対する心臓カテーテル治療は薬物治療の進歩やステントの改良に伴い最近はやや減少傾向にありますが、高度石灰化を有する重症冠動脈病変や心臓の機能が著しく低下した場合などでは高度な技術を要するカテーテル治療を必要とします。また急性心筋梗塞の患者数は横ばいで、死亡率も約7%と依然高い状態が続いています。生命予後を改善させる緊急心臓カテーテル治療はもとより、心原性ショック例への補助循環装置を使用した集学的な治療は重要な役割を担っています。また、カテーテル治療より冠動脈バイパス術が望ましい場合には速かに心臓血管外科に紹介いたします。
 今後高齢化社会が進むにつれて、糖尿病、呼吸器疾患、消化器疾患、腎疾患など様々な併存症を持つ冠動脈疾患も増えてくるものと予想されます。当センターでは関連する診療科と協力しながら、最も良い治療方法を検討いたします。  
 国立国際医療研究センター病院は国立高度専門医療研究センター唯一の総合病院として、循環器内科でこれまで年間約250例、2012年から累計3500件以上の心臓カテーテル治療を行なってきました。これまでの豊富な臨床経験を活かして冠動脈疾患の患者さんに安心、安全に治療を受けていただけるよう心がけています。  
 なお、当院は日本心血管インターベンション治療学会の研修施設です(2023年9月)。
https://www.cvit.jp/_assets/documents/facilities/training-system/brunch/03_kanto.pdf


冠動脈治療センターの特長

  • 365日24時間体制
  • 3次救急を担う救命救急センターとのシームレスな連携
  • あらゆる診療科が設置されており重度の併存疾患を抱える場合にも対応可能
  • 冠動脈病変への高度な医療技術の提供(ロータブレーター、ダイヤモンドバック、血管内砕石術、方向性冠動脈粥腫切除術が可能)
  • 心原性ショックへの補助循環装置の提供(大動脈内バルーンパンピング、インペラ、エクモなど)
  • 心臓血管外科との綿密な連携
  • 高度な知識と技術および経験を持った多職種(循環器内科医、心臓血管外科医、臨床工学技士、看護師、放射線技師など)で構成されたチーム医療

冠動脈治療センターの実績(件数)

  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
負荷心電図 1473 1368 1594 1176 1253 1117
心臓超音波検査 7054 9340 8023 7318 7520 8500
ABI/PWV 2060 1449 2000 1568 2053 3001
冠動脈CT 526 556 630 464 595 561
心臓MRI 64 60 46 25 32 31
心臓核医学検査 687 673 574 442 577 486
心臓カテーテル検査 721 593 701 640 611 590
心臓カテーテル治療 270 257 325 217 243 258
補助循環 23 21 33 25 22 22

ABI (Ancle Brachial Index, 足関節上腕血圧比)
PWV (Pulse Wave Velocity, 脈波伝播速度)


冠動脈疾患に対するカテーテル治療—石灰化病変へのアプローチ

 冠動脈の動脈硬化は重症化すると石のように固くなります。その石灰化がきわめて高度の場合、通常の風船治療(バルーン)では全く歯が立たないことも少なくありません。これにより適切な治療が行えない事があります。そのような病変に対応するために石灰化デバルキングという治療を行います。現在、当センターで行っている石灰化デバルキングは3種類あります。病変の状態に合わせ適切に機器を選択し治療に当たります。


ロータブレーター

 ロータブレーターは冠動脈(心臓の筋肉に血液を送る血管)が悪玉コレステロールなどにより動脈硬化を起こして硬く・狭くなり狭心症や心筋梗塞の原因となっている時に病巣を削りとる道具です。カテーテルの先端に小さなダイヤモンドの粒を装着した楕円体の金属(burr)を高速に回転(毎分16~20万回転)させることで硬いものを削ることができます。冠動脈の中が非常に硬いもの(石灰化)でつまっていて、バルーン(風船)療法だけでは拡張できない場合に使用します。ロータブレーターは柔らかいものは削れにくいのが特徴で、血管を傷つけにくくなっています。

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ダイヤモンドバック

 日本では2019年から保険適用となっており、比較的新しい手技といえます。この装置はダイヤモンドでコーティングされたクラウンと呼ばれる構造物が先端から約6mm手前についており、シャフトの軸を中心に回転し血管壁に沿って周回することで石灰化病変を切削します。ロータブレーターと異なり、クラウンのサイズは1.25mmの1種類のみであり、回転数の違い(1分間に8万回転または12万回転)で切削できる径が変わってきます。最初は低速(8万回転)で石灰化を切削し、血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)で切削された範囲などを確認しつつ、高速(12万回転)で切削していきます。病変に応じてロータブレーターとの使い分けを行っています。

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IVL(Intravascular Lithotripsy:血管内砕石術)

 IVL(Intravascular Lithotripsy: 血管内砕石術)とはShockwave Medical社のIVLシステムによる石灰化病変の破砕を行う処置のことです。2022年3月に本邦で承認され、他のデバルキングデバイスとは異なる機序で石灰化病変へアプローチする新たな治療法となります。PCIにおいて石灰化病変はステントの拡張不良による再狭窄やステント血栓症などのリスクを増大させます。IVLはこの石灰化病変をバルーンによる拡張とバルーンカテーテルに内蔵されるエミッターから発する音圧パルスにより破砕・修正し、ステントの拡張を補助します。IVLでは石灰化病変の切削を行わず、また低圧拡張であるため、解離、穿孔、slow flow、no reflowなどのリスクが軽減されると考えられます。

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心原性ショックに対する補助循環用ポンプカテーテル

インペラ (IMPELLA)

 インペラは左心室の負荷を直接軽減するカテーテル式の血液ポンプです。日本では2017年9月に保険適用となりました。急性心筋梗塞や劇症型心筋炎などによる薬物療法抵抗性の急性心不全、心原性ショックに適応となります。大腿動脈または鎖骨下動脈から経皮的・経血管的にポンプカテーテルを左心室内に挿入・留置し、ポンプ内の羽根車を高速に回転させることで左心室内から血液を吸い込み、その血液を上行大動脈に位置したカテーテル吐出部から送り出すことによって順行性に循環を補助します。また経皮的心肺補助装置(エクモ)と併用することによって、左心室の負荷を軽減させることができます。

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