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麻酔の副作用・合併症

比較的に頻度の高いもの

吐き気・嘔吐

吐き気を少しでも予防するために手術の前にある程度の時間は絶飲食としますので、指示に従ってください。手術の後気分不良が起こることがありますが、吐くこと自体は心配ありませんので、気分が悪ければ教えてください。

頭痛

脊椎麻酔の後で頭痛がすることがあります。ほとんどの場合、安静にしていれば徐々に楽になりますが、長く続くようなら麻酔科に相談してください。また、全身麻酔の後に頭が重い感じがすることがありますが、次第に回復します。

のどの痛み、声がかすれる

ほとんどの全身麻酔では、眠った後で口または鼻から気管に管を通して人工呼吸をします。そのため手術の後で一時的に、のどの痛みを感じたり声がかすれたりすることがあります。ほとんどの場合、数日のうちにおさまります。

歯の損傷、唇のきず・はれ

人工呼吸のための管を入れるときに、器具を使って口を大きく開けます。歯が弱っていたりするとこの時にその歯が欠けたり折れたりすることがあります。しっかり揃っている歯はほとんど問題ありません。もしぐらついている歯があれば、あらかじめ担当麻酔科医に必ず教えてください。またその時に唇が少し傷ついたり、長時間手術などでチューブや固定のテープの刺激で唇が腫れることもありますが、数日のうちにおさまります。

寒気・発熱

麻酔の影響で体温の調節能力が一時的ににぶくなるため、寒気やふるえがきたり発熱が起こることがあります。しばらく温めればじょじょにおさまります。

のどの渇き

手術の前に、唾液の分泌を少なくするために注射をすることがあります。そのため、のどの渇く感じがします。麻酔を円滑に行うためには必要な注射ですので、できるだけご協力ください。がまんできないときは、医師か看護師に伝えてください。

まれな合併症

術後痴呆・せん妄

高齢者の方で、手術の後のいわゆるボケがみられたり、異常な興奮や不可解な言動がみられることがあります。これらの多くは、入院や手術という環境の変化によるストレスが原因で、一時的なものがほとんどです。非常にまれですが、脳梗塞が手術中に起こり意識障害をきたすこともあります。

術後神経麻痺

手術の部位によっては手術中に不自然な体位を取る必要があります。そのため、手術後しばらく手・足がしびれたり痛かったりすることがまれにあります。また脊椎麻酔の後しびれ、痛み、麻痺などの神経症状が残ることがごくまれにあります。

硬膜外腔の感染、膿瘍、血腫形成など

硬膜外麻酔の時(カテーテル挿入時)血管を傷つけ血腫を作ったり、カテーテルを通じて細菌が入り込んだりして感染、膿瘍を形成し、それらが神経を圧迫することがあります。カテーテル挿入部付近の背中の痛みや薬液注入時に痛みを感じたら、医師または看護師に直ちに教えてください。

アレルギー反応

ごくまれに麻酔薬や点滴などに対するアレルギー体質の方がいらっしゃいます。このような体質では、蕁麻疹や喘息様の症状が起こることがあります。その場合は、原因となった薬を止めてアレルギー反応を抑える治療をします。これまでにアレルギーを経験したことのある方や、そのような可能性のある方はあらかじめ担当麻酔科医に教えてください。

悪性高熱症

約10万例に1例の割合で、麻酔薬に特異な反応を起こし、高熱を出してショック状態になるような体質の方がいらっしゃいます。一度これが発症すると10人に1人くらいの死亡率があります。これは遺伝的な体質によりますが、その麻酔薬を使わない限り、この体質があるかどうか分かりません。もし、血縁の方の中に、麻酔で何か異常のあった方がいらっしゃる場合は、担当麻酔科医に教えてください。

肺塞栓症

周術期にじっとしているだけでも下肢の血流が停滞し、血管の中で血液が固まってそれが肺の中で詰まると、突然重篤なショック状態となります。このような危険性は誰にでもありますが、特に喫煙、肥満、高脂血症、下肢静脈瘤などが基礎に存在している方はより高くなります。

これらの周手術期の合併症を引き起こさないように最善の努力をしております。現在、日本国内で麻酔科の専門医がいる病院で、手術中の予期しない心停止例で麻酔が原因と考えられるものは1万例に1例くらいの確率で発症していますが、そのうち死亡にいたるのはそのさらに25分の1くらいです。この数は非常に低く、1年間で交通事故で死亡する数の1000分の1くらいというように、非常に安全性が高いことがご理解いただけたと思います。