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2021年度診療実績

概要

2021年度における当科の入院のべ患者数は年間1226名で新型コロナ感染症対応に伴う一般診療の縮小による影響から昨年度の約1220名とほぼ同数となりました。
その内訳は肺癌32.9%、呼吸器感染症(結核・新型コロナ以外)15.3%、肺抗酸菌症1.7%、アレルギー免疫疾患5.9%、閉塞性肺疾患5.5%、拘束性肺疾患10.9%、呼吸不全1.2%などとなっています。2021年度の入院患者数は1239名、平均在院日数は一般で15.6日でとなります。
外来患者数は90.2名/日(初診653名、再診20,993名)と昨年度の84.5名/日よりわずかながら増加に転じています。

入院実績

疾患群 疾患名 延べ人数  
呼吸器感染症(非結核) 肺炎 124 187
肺化膿症、肺膿瘍 18
膿胸 21
気管支炎 4
真菌症 16
ニューモシスチス肺炎 4
肺抗酸菌症 肺結核/肺外結核 4 21
非結核性抗酸菌症 16
陳旧性肺結核 1
閉塞性肺疾患 COPD 57 67
気管支拡張症/慢性気管支炎 10
拘束性肺疾患 間質性肺炎 96 134
肺線維症 22
器質化肺炎 11
放射線肺臓炎 5
アレルギー・免疫疾患 気管支喘息 42 72
薬剤性肺炎 14
過敏性肺炎 5
好酸球性肺炎 5
サルコイドーシス 6
肺腫瘍 肺癌 396 403
縦隔腫瘍 4
その他 3
肺循環疾患 肺血栓塞栓症 5 8
肺高血圧症 3
胸膜疾患 胸膜炎 4 47
結核性胸膜炎 2
癌性胸膜炎 2
悪性胸膜中皮腫 3
気胸 36
呼吸不全 呼吸不全 14 15
睡眠時無呼吸症候群 1
その他 胸部異常陰影 5 42
喀血/血痰 15
胸水 12
気管支狭窄 4
肺胞蛋白症 2
血管炎 2
その他 2
COVID-19 230 230

呼吸器内科 入院患者(2021年度)総計1,226例

呼吸器内科入院患者 FY2021

内視鏡実績

別に挙げる表の様に、年間約330件程度の気管支鏡検査を行っております(2020年度は新型コロナ流行の影響で内視鏡検査は控えられたため減少しています)。

当院では肺野末梢の陰影に対しては、検査前に64列マルチスライスCT撮影によりバーチャル気管支鏡を作成し、シースガイド下超音波法(EBUS-GS法と呼ばれます)を併用します。これらにより末梢小型病変の診断精度が高まります。縦隔リンパ節腫大病変に対しては、リアルタイムに超音波を見ながら針穿刺吸引法を行い正診率を上げています(EBUS-TBNA法と呼ばれます)。びまん性肺疾患の診断目的には気管支肺胞洗浄(BAL)、経気管支肺生検(TBLB)を多数施行しています。外科的肺生検に近い大きな病理検体を採取するために肺組織を凍結し生検するクライオバイオプシーという新手法も2019年より導入しました。診断目的以外に気管支サーモプラスティ、異物除去、気管支拡張術、腫瘍焼却術(APC、スネア、ホットバイオプシー)、金属ステント留置、EWSによる気管支充填術などの気管支鏡による治療も行っております。2016年より中枢気道狭窄に対する硬性気管支鏡によるDumonステント留置術も行っています。特に重症喘息患者に対する気管支サーモプラスティ治療は、2015年より始まった新規非薬物療法であり全国でも限られた施設でしか施行できません。当院では経口ステロイド薬や生物学的製剤を使用していても増悪を繰り返す最重症喘息患者に対し本治療を行い、約7割の患者で治療効果が確認されています。現在、東京だけでなく全国各地(10都道府県)から患者が集まり全国一の治療件数です。

また先にも述べましたが検査時の苦痛を和らげるために、点滴より鎮静剤投与を行っております。3名の気管支鏡指導医、5名の専門医の下で、気管支鏡検査前にカンファレンスがあり、安全性の評価や必要な手技の確認、どの気管支からどのように診断していくかなどを皆で議論し、より安全かつ有意義で時間を短縮した検査になるよう努めております。

以上の様に豊富な経験を有し、かつ患者さんの苦痛軽減に努めております。病気を指摘された上に聞きなれない検査をすすめられてさぞ御不安のことと存じますが、以上のご説明で不安が少しでも和らげば幸いです。

  臓器別 2019年度 2020年度 2021年度
全体件数 356 213 334
中枢診断 直視下生検 23 9 14
EBUS-TBNA 49 20 39
末梢診断 EBUS-GS下生検 98 78 106
BAL 53 30 66
TBLB 52 33 63
クライオバイオプシー 12 16 24
治療 気管支サーモプラスティ 23 5  9
バルーン拡張 1 0 1
高周波スネア 1 0 1
異物除去 1 0 0
気管支充填術(EWS) 2 4 6
Dumonステント留置
(硬性気管支鏡)
3 2 3
硬性気管支鏡 3 2 6

腫瘍性疾患

2021年度当科ではのべ518名の腫瘍性疾患患者が入院していました。2020年度がのべ517名ですのでほぼ同じ入院数です。新型コロナの影響が減るまでは似たような傾向になることが推測されました。

診断においては軟性気管支鏡検査や胸水穿刺、局所麻酔下胸腔鏡を自科で実施しています。他科との連携も維持し、CTガイド下生検は放射線診断部と連携しています。特に呼吸器外科、放射線治療部とは週1回の合同会議以外でも、診断から治療までスムーズな連絡が取れています。分子標的マーカー検索の各腫瘍への広がりを受けて、転移性疾患の分子標的マーカー検査用検体採取依頼も少し増えた印象です。

進行期非小細胞肺癌の治療方針決定には現在分子標的マーカーの検索が必要となっています。診断においては次世代シーケンサー検査が承認された当初より、従来法からのスムーズな切り替えができております。またLC-SCRUMという分子標的マーカー検査の臨床研究にも参加し、患者の状況に応じて最新技術による診断を提供することも可能にしています。治療においてはJCOGを始めとする臨床研究に参加しております。

【月別入院数】

  延べ人数   延べ人数
2021/04  42 2021/10  45
2021/05 49 2021/11 38
2021/06 34 2021/12 54
2021/07 37 2022/01 51
2021/08 41 2022/02 51
2021/09 45 2022/03 31

【性別】

seibetsu

【年齢】

nenreibetsu

【がん種別】

gan_shubetsu

【ステージ】

haigan_stagebetsu

【肺癌組織型】

haigan_soshikibetsu

新型コロナ感染症対策

当科は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の診療と対策において、国際感染症センターとともにその主翼を担ってきました。院内では、人工呼吸器管理を要する多数の患者の診療、特定臨床研究を含む治療法開発のための臨床研究や治験への参加、内科診療チームの編成と調整を行ってきました。また、他院への医師派遣協力、COVID-19診療連携新宿モデルを推進し、積極的に近隣の医療機関と連携し、重症患者の転院搬送受入れおよび回復者や軽症者の転出要請を行い、有効な病床利用に努めました。診療実績は、下記の通りであります。

  • 患者数;228名(男性162名、女性66名)
  • 年齢(中央値);56(43‐70)歳
  • 侵襲的陽圧換気(IMV)を使用した重症患者;4名
  • 非侵襲的陽圧換気(NPPV)を使用した重症患者;44名
  • ハイフローネーザルカニュラ(HFNC)を使用した準重症患者;25名
  • ECMO;1名
  • 死亡;17名(致死率2.5%)

委員会、カンファレンス活動

  1. 呼吸器内科カンファレンス
     ① 新患カンファレンス:      毎週火曜日
     ② チームカンファレンス:     毎週月、木曜日
     ③ 結核カンファレンス:      毎週火曜日
     ④ 気管支鏡カンファレンス:    毎週木曜日
     ⑤ 抄読会:            毎週火曜日
  2. 合同カンファレンス
     ① キャンサーボード:       毎週水曜日(呼吸器外科、放射線治療部)
       全体キャンサーボード:       毎月第3金曜日(病院全体)
     ② 呼吸器病理検討会:       月1回(病理部)

研究

臨床治験

  • l ONO-4538第Ⅲ相試験 非扁平上皮非小細胞肺がんに対する多施設共同二重盲検無作為試験(研究責任医師:仲 剛)
  • Mycobacterium avium Complex (MAC)に起因する肺非結核性抗酸菌(NTM)感染症の新規診断を受けた成人患者を対象に、アミカシンリボソーム吸入懸濁液(ALIS)ベースレジメンの有効性および安全性を評価する、ランダム化二重盲検、プラセボ対照、実薬対照、多施設共同試験(研究責任医師:高崎 仁)
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたサルグラモスチムの臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験(研究責任医師:泉 信有)
  • 好酸球性重症喘息を有する成人および青年期患者を対象としたGSK3511294投与後の増悪率および喘息コントロールのその他の指標並びに安全性をメポリズマブ又はベンラリズマブ投与と比較して評価する、52週間の無作為化、二重盲検、ダブルダミー、並行群間、他施設共同、非劣性試験(研究責任医師:飯倉 元保)
  • 進行性フェノタイプを示す慢性線維化性間質性肺疾患患者を対象としたTAS-115第2相用量反応臨床試験(研究責任医師:泉 信有)
  • 肺線維症患者を対象としたBMS-986278の有効性、安全性及び忍容性を検討するランダム化二重盲検プラセボ対照第2相試験(研究責任医師:泉 信有)
  • 特発性肺線維症患者を対象にPRM-151の有効性及び安全性を検討する第Ⅲ相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験(研究責任医師:泉 信有)
  • 肺線維症(IPF)患者を対象としたpamrevlumabの有効性及び安全性を評価する第Ⅲ相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(研究責任医師:泉 信有)
  • 治療抵抗性の肺MAC症成人患者を対象にクラリスロマイシン及びエタンブトールを用いた治療レジメンの一剤としてベダキリンを投与した時の有効性及び安全性を評価する第Ⅱ/Ⅲ相多施設共同ランダム化非盲検実薬対照試験(研究責任医師:高崎 仁)

特定臨床研究

  • COVID-19肺炎患者に対するトレミキシンを用いた血液浄化療法(PMX療法)の有効性及び安全性に関する探索的試験(研究責任医師:泉 信有) 重症COVID-19患者に対してトレミキシンを用いて血液浄化療法を行うことの有効性及び安全性を確認する特定臨床研究を、東京医科大学と共同で実施し、2021年3月31日で組み入れを終了した。
  • 非小細胞肺癌に対するPD-1経路阻害薬の継続と休止に関するランダム化比較第III相試験(JCOG1701)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • 高齢者切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する低用量カルボプラチンを用いた化学放射線療法とカルボプラチン+アルブミン結合パクリタキセルを用いた化学放射線療法を比較するランダム化第III相試験(JCOG1914)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • 進展型小細胞肺癌に対する胸部放射線治療の追加を検討するランダム化第III相試験(JCOG2002)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • ドライバー遺伝子陰性・不明の未治療進行非小細胞肺癌に対するプラチナ製剤併用化学療法+ペムブロリズマブとプラチナ製剤併用化学療法+ニボルマブ+イピリムマブのランダム化比較第III相試験(JCOG2007)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • 高悪性度神経内分泌肺癌完全切除例に対するイリノテカン+シスプラチン療法とエトポシド+シスプラチン療法のランダム化比較試験(JCOG1206)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • EGFR遺伝子変異陽性 再発・進行非小細胞肺癌患者対象のAfatinibまたはOsimertinibを一次治療とした無作為化非盲検第Ⅱ相試験(Heat on Beat)(研究責任医師:竹田 雄一郎)

主な臨床研究

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の前向き観察研究(研究責任者:杉山温人) COVID-19の患者から前向きに検体を集める研究の事務局を行っている。この研究で得た検体をもとに、複数の観察研究や企業との共同研究が行われている。
  • インフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2新規検出試薬の性能評価試験(研究責任者:辻本 佳恵)
  • 不活化溶液入り唾液採取キットを用いたSARS-CoV-2 RNA検出率の比較研究(研究責任者:勝野 貴史)
  • COVID-19患者における急性呼吸不全に関する検討(研究責任者:放生 雅章)
  • COVID-19後遺症に関する実態調査(中等症以上対象)(研究責任者:放生 雅章)
  • 新型コロナウイルス感染症の診断における唾液PCR検査の最適化に関する検討(研究責任者:寺田 純子)
  • 改良SARS-CoV-2 RNA 検出試薬の評価研究(研究責任者:石井 聡)
  • 間質性肺炎合併肺癌の術後急性増悪に関する臨床-放射線-病理学的検討(研究責任者:泉 信有)
  • 多分野合議による間質性肺炎診断に対する多施設共同前向き観察研究(PROMISE study)(研究責任者:泉 信有)
  • 特発性間質性肺炎の前向きレジストリの構築とインタラクティブMDD診断システムを用いた診断標準化に基づく疫学データの創出(研究責任者:泉 信有)
  • レセプトデータベースにおける肺非結核性抗酸菌症の症例定義に関するバリデーション研究(研究責任者:寺田 純子)
  • 非結核性抗酸菌症の疫学実態調査と環境要因に関する探索的研究(研究責任者:寺田純子)
  • COVID-19罹患の気管支喘息患者に関する後ろ向き観察研究(研究責任者:塚田晃成)
  • 新規抗SARS-CoV-2抗体検査試薬(COV-1-1)の開発および後ろ向き臨床性能評価(研究責任者:草場勇作)
  • COVID-19 肺炎患者に対して早期に HIGH FLOW NASAL CANNULA(HFNC)を用いた酸素療法を行うことの有効性及び安全性に関する探索的試験 ~ECHO STUDY(仮)~(研究責任者:鈴木学)
  • 重篤COVID-19患者におけるステロイドパルスの有効性及び安全性に関する後ろ向き観察研究(研究責任者:杉浦有理子)
  • JCOG-バイオバンク・ジャパン(BBJ)連携バイオバンク(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • EGFR 遺伝子変異陽性進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するゲフィチニブまたはオシメルチニブ単剤療法とゲフィチニブまたはオシメルチニブにシスプラチン+ペメトレキセドを途中挿入する治療とのランダム化比較試験(JCOG1404)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • EGFRチロシンキナーゼ阻害剤への耐性獲得機構解析とLiquid biopsyの有用性を検討するバイオマーカー研究(JCOG1404A1)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • 肺癌登録合同委員会 悪性胸膜中皮腫の前方視的データベース研究
  • 臨床病期IA期非小細胞肺癌もしくは臨床的に原発性肺癌と診断された3 cm以下の孤立性肺腫瘍(手術不能例・手術拒否例)に対する体幹部定位放射線治療のランダム化比較試験(JCOG1408)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • アジア人の非小細胞肺癌における個別化医療の確立を目指した、遺伝子スクリーニングとモニタリングのための多施設共同前向き観察研究 ( LC-SCRUM-Asia ) (研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • Epidermal Growth Factor Receptor activating mutation positive(EGFRm+)進行非小細胞肺がん(NSCLC)初回オシメルチニブ治療の効果、安全性及び増悪後の治療に関する観察研究(Reiwa研究)(研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • 非小細胞肺癌における薬物治療耐性後の個別化医療の確立を目指した、遺伝子スクリーニングとモニタリングのための多施設共同前向き観察研究(LC-SCRUM-TRY) (研究責任医師:竹田 雄一郎)
  • 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)または進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)患者に対するアテゾリズマブ併用療法の 多施設共同前向き観察研究(J-TAIL-2)(研究責任医師:竹田 雄一郎)