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2022年 医療技術等国際展開推進事業(エジプト・アラブ共和国乳房撮影技術強化事業)

事業概要

 乳がんはエジプト人女性の罹患率が最も高いがんです。エジプト国内のがん罹患率のうち、16.4%が乳がんとされています。乳がんは早期発見ができれば生存率が高いことが知られていますが、エジプト国内では乳がん検診が一般的ではないため、症状が進行してから発見される場合が多く命を落とす原因ともなっています。
 本事業では、日本製マンモグラフィ装置が納入されているカイロ大学病院および保健省管轄病院を対象にマンモグラフィの技術支援を行い、撮影技術向上を通じて乳がんの早期発見・死亡率減少の一助となることを目的としています。

研修日程

・オンラインセミナー
第一回 「乳がん検診・診断」 2022年10月14日
第二回 「精度管理」     2023年2月3日
第三回 「マンモトーム」   2023年2月10

・エジプト渡航
第一回 2022年12月2日~10日(長谷川、松永、藤井、寺嶋)
第二回 2023年2月10日~19日(北村、遠藤、黒澤)

内容

・第一回渡航
 病院視察およびエジプト側関係者との顔合わせにより、今後の円滑な事業運営を進めることを目的として渡航しました。また2月開催のオンサイトセミナーの概要を決定し、次年度の事業継続を協議しました。第一回渡航では、カイロ大学病院、保健省管轄病院であるAl-galaa Educational hospitalおよびSednawi hospitalを訪問しました。三施設の撮影室を見学し、実際に撮影された画像を拝見しました。撮影室内は綺麗に整理整頓されており、装置も清潔に保たれていました。臨床画像のポジショニングについては改善の余地があるものの、エジプト人女性の体格に合わせて工夫して撮影されていました。現地でマンモグラフィを担当している女性技師と情報交換を行ったところ、痩せ型の女性のポジショニングに苦労しているとのお話があり、日本での撮影時の工夫をお伝えしました。

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・第二回渡航 
 第二回渡航では、カイロ大学病院および保健省管轄病院であるShoubra General Hospitalにて、日本での乳房撮影技術に関する動画によるポジショニングセミナーおよびハンズオンセミナーを実施しました。日本とエジプトでの撮影技術の大きな違いは、MLO撮影の角度を45度程度で行っている点でした。エジプトではとても乳房が大きい患者が多く、技師と患者の負担軽減のため、このような角度になっているそうです。ハンズオンセミナーでは、日本での撮影技術は小乳房の患者に有効なため、慣れない角度での撮影にも熱心に参加していただけました。今後は、精度管理やXCC等の追加撮影技術、バイオプシーを学びたいとの意見を得ました。

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所感

 エジプト国内で乳がん検診が普及していない理由として、乳がん検診の認知度が低いこと、公的病院では医療費が低額である一方で患者数が多いため受診までにかかる期間が長いこと、民間病院では医療費が非常に高額であることなどエジプト国内の医療事情が関係しています。しかし保健省では乳がん検診に対する課題を重く受け止め、乳がん検診のキャンペーンを推進するなど注力されている部分であるとの印象を受けました。乳がん検診の受診率が低いことは、エジプトだけではなく日本国内においても課題とされています。その理由として仕事や家事、育児などに追われてつい検診を先延ばしにしてしまうなど、エジプト人と日本人にも共通する点があると感じました。
 当院でも人間ドックにて乳がん検診(マンモグラフィ)を行っており、自分自身も検査に携わることがあります。本事業での経験を日々の業務に活かし、エジプト・日本両国での乳がんの早期発見および死亡率減少に貢献していきたいです。

   筆者 黒澤・寺嶋