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がんゲノム医療

ゲノム医療とは

遺伝情報の全てをゲノムといい、その中でもタンパク質を設計する部分を遺伝子といいます。私たちの身体はこの遺伝子の情報にそって作られています。タンパク質を設計する遺伝子に変化が起こることで正しいタンパク質が作られず、これががんの原因になることがあります。このような遺伝子の異常を調べ、異常に応じた治療を個別に行うことをがんゲノム医療といいます。 ゲノム医療について詳細は当院臨床ゲノム科の「ゲノム医療の基礎知識」をご覧ください。

分子標的薬の登場

がん薬物療法にはさまざまな種類がありますが、細胞の分裂や働きを妨げることで効果を発揮する「化学療法」に対して、異常な遺伝子によって作られたタンパク質をターゲットにすることでがん細胞を選択的に攻撃する「分子標的薬」があります。分子標的薬がターゲットにするがん細胞がもつ遺伝子の変化をあらかじめ調べる検査を「コンパニオン診断」とよび、2011年ごろから分子標的薬とセットで行われるようになりました。

がん遺伝子パネル検査とは

2017年になると、遺伝子の変化を一つ一つ調べるコンパニオン診断とは異なり多数の遺伝子を同時に調べる「がん遺伝子パネル検査」が登場したことで、がん細胞に起きた遺伝子の変化を総合的に捉え、一人一人に合わせた治療の検討が可能になりました。遺伝子パネル検査は2019年より保険診療として全国のがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院で受けることができます。
当院は2018年にがんゲノム医療連携病院に指定されています。

がん遺伝子パネル検査の対象となる方

がん遺伝子パネル検査を保険診療で受けるためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 標準治療がない固形がん*
  • 局所進行もしくは転移があり標準治療*が終了した(あるいは終了する見込み)

* 固形がん:臓器に塊を作って増殖するがんのことで、胃がん、肺がん、乳がん、大腸がんのほか、希少がんとよばれる肉腫も含まれます。(それに対して造血器(血液やリンパ組織)に発生する造血組織の異常によるがんを血液がんといいます。)

* 標準治療:科学的根拠に基づいた最良と考えられる治療法で、がんの種類や状態に応じて推奨される治療のことを標準治療といいます。

がん遺伝子パネル検査の流れ

  1. 対象であれば提出する検体(病理の検体)の適正について病理医が評価します。
  2. 主治医より十分な説明を受けて検査に同意されたら検査を提出します。
  3. 一人一人の診療の情報やゲノム解析の結果を保管するデータベース(C-CAT)に情報提供をします。
  4. 多数の遺伝子を同時に検査した結果、ある特定の遺伝子に変化があった場合、解析結果について東京大学医学部附属病院の専門家と連携して吟味し(エキスパートパネル)、その結果を当院の担当医が患者さんに説明します。
がん遺伝子パネル検査の流れ

がん遺伝子パネル検査の種類

当院では以下の3つの検査について対応しています。どの検査を使用するかは主治医が判断します。

  • FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル
  • FoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイル
  • OncoGuide NCCオンコパネル システム

がん遺伝子パネル検査の費用

一生に一度だけ保険診療で検査を受けることができます。検体を提出時に44万円(検査料)、検査結果説明時に12万円(検査結果評価料)をお支払いいただきます。いずれも医療保険制度に基づいた自己負担分(1-3割)をお支払いいただきますが、高額医療による減免の対象となります。

がん遺伝子パネル検査の留意点

  • がんの種類や全身の状態によっては検査を受けられないことがあります。
  • 検査について説明を受けて同意した時から結果が説明されるまでには約8週間 程度要します。
  • がん組織の状態によって適正な検査が行えない場合、遺伝子の変化が見つからない場合、検査結果の解釈が難しい場合、適した薬剤(治験)がない場合などは、検査を受けても治療につながる情報が得られないことがあります。
  • 現時点で検査を受けて遺伝子の変化が見つかる割合が50%程度、そのうち実際に治療につながる割合は10~20%と報告されています。
  • 検査の結果、がんになりやすい遺伝子をもっていることがわかる可能性もあります。このようながんになりやすい体質は次の世代に受け継がれることもあります(遺伝性腫瘍)。もともと調べたいがんのこと以外の情報を聞かないように指定することもできますが、遺伝子を調べることへの不安や不快な気持ちがある場合は遺伝カウンセリングを受けることもできます。NCGMでは臨床ゲノム科が対応しています。「ゲノム医療の受診に向けて」もご参照ください。

がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査について詳細は以下のリンクをご参照ください。
がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査
国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター 「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査 」ウエブサイト