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研修OB/OGの声
竹川 良介(2012年3月 レジデント研修修了)
研修医のみなさん、救急についてどのような印象を持っていますか?
研修医の間にトレーニングするべき様々な疾患の診察を経験できる、色々な手技が経験できる、などでしょうか?おそらく研修医として研鑽を積む目的としては非常に良い場だと思います。 そこには「目の前にいる患者全てを診る」という医者の原点があるからです。では、研修医を2年終えた後、救急科を自分の専門とすることについてはどう考えていますか?
近年医療は細分化の傾向にあり、例えば循環器内科医といっても、虚血、不整脈、心不全などとさらに専門がわかれるほどです。一方で救急は地域によってそれぞれの特色があり、救急医に求められる ことも多種多様です。まさに社会のニーズを反映している科といえます。動物咬傷ひとつとっても、犬猫によるものから、ヘビやクラゲなどによるものまで、地域によって頻度が様々です。中毒に関しても、 農村地では農薬中毒が見られるのに対し都会では脱法ドラッグなどの頻度が高くなります。これは他科とは大きく違う点でしょう。ただし救急医は不足しており、救急医がいないところでは各科の医師が 救急当直を行っている現状があります。
多くの疾患は救急医でなくとも対応可能かもしれません。しかしある一定の割合で、救急医でなければ救えない症例、拾い上げられない症例が存在するのも事実です。外傷、熱傷、中毒、ショックの患者 は当然のことながら、一見、安定しているが実は重大な疾患が隠れている患者たちを救える、帰宅させずに拾い上げられるのが救急医です。実際、各科医師の当直ではそういった患者の対応に苦慮する 場面もあるのです。また、多科にまたがる疾患を抱えた患者の場合、その病態も複雑であり、集中治療をおこない全身的に管理ができるのも救急医および集中治療医だと思います。いま多くの場面で専門 性が求められる傾向にありますが、広く引出しを持って見逃しなく初療をおこない、重症患者の集中治療もおこなうところに救急のアイデンティティーはあると考えます
現在日本には2種類の救急形態があります。1つは、昭和42年に重症救急の専門施設である特殊救急部として大阪大学医学部付属病院に初めて開設されたもので、自分たちで手術も集中治療も完結させる タイプの救命センターです。もう1つは、軽症から重症まであらゆる患者さんを対象として外来診療をベースとするER型救急というものです。後者に関しては近年日本でも発達してきましたが、いまだ成長 途上であり日本救急医学会でもER検討委員会が発足し診療、教育、研究活動の推進が行われています。では、NCGMはどうかというと、外来と集中治療の両者を兼ね備えた上記2つのタイプの救急を合わせた ものといえます。
皆さんが救急医を目指すうえで、どちらの救急医になりたいでしょうか?私個人の考えですが、完結型救命センターの救急医が、ER型病院でER医として働けるかといえば、それはNOです。そして逆もしかりです。 日本の救急を担っていく上では、両者の救命センターで経験をする、もしくは両者の考え方を知っているというのが必要と思います。私はNCGMで後期研修を修了した後、現在大阪大学の高度救命救急センター の医局に所属しています。手術的介入も積極的に行う点はNCGMとは大きく異なりますが、臨床、教育、研究の3本柱としたNCGM救急科で受けた指導のおかげで、救急医療に対する考え方の根幹は大阪大学に 移っても十分通用するものだと実感しています。少なくとも、NCGMで豊富で多様な症例を経験できたということは、他の施設では得られないものであり、一生の財産になるでしょう。そして、ERおよび集中 治療の両者を行うNCGMのようなタイプの救命救急センターは、高齢化社会を迎える日本において、今後広まっていくモデルであると私は信じています。今後皆さんが進路を検討する時にぜひ一度考えてみてください。日本の救急を一緒に牽引していきましょう。
稲垣 剛志(2012年3月 レジデント研修修了)
これから研修医やレジデントになる人たちへ
私はNCGMで後期研修を行い、救急医学を学びました。 全ての人は日々の経験を糧に人格が育っていくものですが、私の人生においてNCGMの救急科で働いた経験は私の人格の成長には大きく貢献していると思います。 NCGMの特徴は、東京の新宿において救急車を受け入れ続け、病院選定困難であったり多くの合併症を抱えていたりする患者をも受けているということです。身体的・精神的・経済的に困難な状況に陥った多くの人と関わることにより、また高齢社会を迎え経済的にも問題を抱えるわが国全体をも見た上で、国や社会が求めるものは何かを察知し考えを巡らせることができる場所であり続けており、このことが私の考える最も良い点です。
研修医と共に働き、彼らの教育に関われることもとても大きなことです。 プライマリ・ケア医を育てる目的で行われる臨床研修において、救急科や総合診療科での研修は最も重要であり、特に救急科は今後の日本を担う研修医たち全てが経験していく科です。彼らの教育に関われることを幸せに感じ、短い研修を実り多いものとするためにはどうすればよいか考えたいと思います。
私には日々生と死に向き合うことで知り得たことがあります。生と死は切れない関係にあり、死について考えることなしに生の尊さを語ることはできません。生と死を扱う医師はこれについて考える必要があります。人の運命に対して医師ができることは少ない、否、本質的には無いのかも知れませんが、医師は経験や知識を以て生の見込みや死の兆候を知ることができるようになります。それを活かして病に伏し死に瀕して苦しむ人に寄り添い、苦しみから救われるよう手助けすることができるのです。とても基本的なことですが、私にできることはこのようなことだと考えています。 医師になった方一人ひとりの夢は色々あるでしょう。新しい医療技術を開発すること、研究を行って論文を発表すること、国際協力に貢献すること、開業して地域医療に貢献すること、官僚となり医療制度改革に携わること、家庭と両立することなど十人十色でしょう。
様々な夢を持つ皆さん全てにとって、NCGM ERでの経験は活かされるだろうと思いますし、そのような皆さんと共に語ることができれば、それが私にとっても最も嬉しいことでもあります。
中尾 俊一郎(2013年3月 レジデント研修修了)
3年間の国際医療センターのレジデント生活が終わろうとしています。三重大学医学部を卒業し、三重大学付属病院で初期研修、各科ローテーションで、今後どのような医師になりたいかを考え、ここで一生修行するのはどうかと自問自答しつつ研修生活をおくりました。 初期研修は市中病院での研修もあり、救急外来業務も当然ありました。以前より海外ドラマERの大ファンであり、救急医療には以前から興味はありましたが、救急要請され、患者対応し、患者が緊急事態か どうか、どのような病態なのかを判断して安定化させ、専門治療に結びつけていく救急医療に非常に興味を持ちました。また、三重での初期研修中に、米国のニューメキシコ大学病院の救急外来に6週間 研修をさせていただき、救急医療の魅力、教育体制の違い、医療資源に違い、文化的背景の違いなどを感じる機会があり、今後も救急医療を学びたいと思いました。
日本で救急医療の修行するにあたって、病院見学しましたが、自分の他の目標として、国際医療協力も関わってみたいと思っていたこともあり、国際医療協力局も隣接されており、さらに立地も新宿と 大変恵まれており、大変魅力的であったため当院を選びました。
当院の救急科は、北米型のER型で救急医療を行っており、いわゆる三次救急のみではなく軽症から中等症と思われる患者も初療を行うこととなっており、システムとしては救急車での来院をすべて請け 負うというものですが、年間救急車台数は東京都で一番であり、軽症と思われる方も救急車で来院されたりもするので、救急医として身につけておきたい、軽症に見えて実は重症な病態の患者などを見つ ける技術も身に付きます。また、三次救命センターもかねているため、とても重症な患者も搬送されてきます。救急外来も広く設計されており、重症患者に対応できる蘇生室が2ベッド、モニター監視で きるブースが6ベッド、また陰圧室や除染室もあり、CTや透視室も救急外来に併設されています。入院ベッドは救命センターとして30床あります。救急車で搬送された患者は基本的にすべて救急科が診療 にあたります。若手医師であるレジデントが救急外来をマネージメントし、専門医以上の上級医は相談役、教育役として見守ってくれる存在であり、質の高いオンザジョブトレーニングが実践できます。
またカンファレンスも充実しており、特に毎朝のカンファレンスでは、前日の患者の検討会が行われ、診療に対するフィードバックや教育が行われます。救急領域でも、文献的に蓄積された領域、コンセンサスが得られていない領域などが多くありますが、救急科では、可能な限り根拠を求められる教育体制であり、また自分たちでも症例を蓄積し、統計的解析方法も学んで新たな研究結果を発信しよう としています。
レジデント研修の中で、統計センター研修、小児救急研修(成育医療センター)、病棟研修(集中治療など)など3ヶ月ずつのローテーション期間があり、より質の高い研修ができます。特に臨床研究は 積極的に行うよう勧められ、とくに海外での学会発表をするように促されます。初心者でも貴重な経験をさせていただけます。自分もアイルランドでの国際救急学会で口頭発表させていただきました。 当院は研修医も大学病院並みに多く、研修医教育にも力を入れています。レジデントは、指導医から指導される立場ではありますが、研修医教育も義務づけられており、実践のなかで指導します。また、 救急科のセンター内にシミュレーションセンターがあり、いわゆるオフザジョブトレーニングも行っています。かつての院内ICLSコースも、現在では日本救急医学会認定のICLSコースとなっており、レジデ ントは指導者として参加します。このような経験から、指導力も身に付いていくと思われます。さらに当院はあらゆる目的で全国から医師がきており、また学術集会も近隣で行われることも多く、貴重な仲間や指導者に巡り会ったりする可能性が高いことも魅力です。
また、当院での救急外来勤務は2交代のシフト制であり、オンオフが非常に明確です。夜勤が終われば、マダムのようにランチに行ける上に、ともに夜勤を過ごした仲間たちと酒も飲めます。働いた後の ビールは最高です。昼間のビールは優越感に浸れます!この経験ができるのは救急医の特権ではないかと思っています。オフの時間が有効に活用でき、さらに救急医としても十分な修行ができ、メリハリの ついた研修ができる病院だと思います。
ここでのレジデント生活は、当初想像していたよりも充実したものとなりました.今後はフェローとして残り、救急医療の修行を続けつつ専門医試験に望み、国際医療協力に向けてがんばりたいと思います。 このような魅力いっぱいの、国立国際医療研究センター病院の救急科レジデント研修をしませんか?
小田 紘子(2013年3月 レジデント研修修了)
私は学生時代から産婦人科を希望しており、当センターには産婦人科専従初期研修医として入りました。初期研修中に各科で多くの先輩医師や患者さんと出会い、科の垣根を越えて患者さんの全身を診ることができる医師に強く憧れを抱くようになりました。そして産婦人科に専門を決める前に救急科で後期研修を行う道を選びました。
救命センターで年間1万人を超える患者さんを診察し、救急や集中治療の考え方を学ぶと診療の視点が変わり、どのような疾患であっても目の前の患者さんに対して何らかの手が差し伸べられるようになります。また患者さんを通して、様々な社会問題を目の当たりにし、命の尊厳について考えさせられる機会も多く与えられました。
3年間の後期研修を終えて私は今、産婦人科医としてまた新しい一歩を踏み出そうとしています。この救急科で行う医療は医療の原点であると同時に、最高峰であると思っています。