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バセドウ病

確認・更新日(2025年2月7日)

バセドウ病の概要

甲状腺とは前頚部に位置し、全身の臓器に作用して代謝調節をつかさどる“甲状腺ホルモン”を産生する臓器です。正常の状態では、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone: TSH)が、甲状腺に存在する“TSH受容体”を刺激し甲状腺ホルモンが合成、分泌されます。
バセドウ病は、“TSH受容体”を刺激する自己抗体(TSAb)が体内で作られてしまい、TSAb がTSH受容体を刺激し続け、甲状腺ホルモンが過剰に合成・分泌される病気です。TSAbが作られる原因は不明ですが、甲状腺に対する自己免疫体質の遺伝や、ウイルス感染や強いストレスや妊娠・出産などの何らかの自己免疫機序がきっかけではないかと考えられています。

バセドウ病の症状

a)臨床所見

  1. 頻脈(動悸)、体重減少、手指振戦(手指が細かく震える)、発汗増加などの甲状腺中毒症の所見
  2. びまん性甲状腺腫大
  3. 眼球突出または特有の眼症状

b)検査所見

  1. FT4、FT3のいずれか一方または両方が高値
  2. TSH低値(0.1μIU/ml以下)
  3. TRAb陽性、または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性
  4. 典型例では放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性の取り込みを認める

a)の1つ以上に加えてb)4つを有する場合、バセドウ病と診断されます、a)に加えてb)の1~3を認めた時点で「確からしいバセドウ病」として治療開始を検討します。血液検査や甲状腺エコーだけでは診断が難しい場合は、甲状腺シンチグラフィを行うことがあります。

治療

①抗甲状腺薬の内服治療

(1)チアマゾール(MMI)(メルカゾールR)
(2)プロピオチオウラシル(PTU)(プロパジールR)

副作用

両者に共通の副作用は無顆粒球症、肝障害、薬疹です。稀にANCA関連血管炎やSLE様症状を起こすことがあります。
上記の副作用は、内服を開始してから2~3ヶ月以内に起こりやすいため、内服開始少なくとも2ヶ月は2週間おきに通院して血液検査を受ける必要があります。また、内服後に咽頭痛や発熱、リンパ節の腫れ等を認めた場合はすぐに内服を中止して医療機関を受診するように患者さんに指導しています。

上記2剤以外にヨウ化カリウム(KI)を併用することがあります。KIの投与によって甲状腺におけるヨウ素の取り込みが阻害され、甲状腺ホルモンの合成が抑制されます。しかし長期使用によって効果に耐性が生じる(=エスケープ現象)ため、短期間にとどめる必要があります。


②アイソトープ治療(131I内用療法)

放射性ヨードのカプセルを内服して甲状腺を壊し、甲状腺ホルモンの合成を低下させる治療法です。1回の治療で効果が乏しい場合は、アイソトープ治療を2回以上繰り返す場合があります。治療後は甲状腺機能が低下し、生涯にわたり甲状腺ホルモン薬を内服する可能性があります。放射能を使う治療ですが、アイソトープ治療によって癌や白血病の発生は増えなかったと報告されています1)。

アイソトープ治療の適応 2)3)

絶対的適応

  • 抗甲状腺薬で無顆粒球症、重症肝障害などの重大な副作用が出たとき

相対的適応

  • 内服治療や手術治療を希望しないとき
  • 抗甲状腺薬で寛解に入らず、薬物療法の継続を希望しないとき
  • 手術後にバセドウ病が再発したとき
  • 甲状腺機能亢進症を確実に治したいとき
  • 甲状腺腫を小さくしたいとき

絶対的禁忌

  • 授乳婦
  • 妊娠している可能性がある女性
  • 6ヵ月以内に妊娠する可能性がある女性
  • 重症の心臟病・肝臟病・糖尿病などの慢性疾患が併存する症例

慎重投与

  • 18歳以下(5歳~18歳:薬物療法や外科治療が困難な場合のみ容認される、5歳未満:原則禁忌)

治療の流れ

  • 治療の約1週間前からヨード制限食を開始:ヨードを含む食品(海藻類、ヨード卵、寒天、魚介類など)を制限する食事を開始します。ヨード制限が不十分だと治療効果が低下してしまいます。
  • 治療の3日以上前から抗甲状腺薬やヨウ化カリウムを中止
  • 治療の約4日前:甲状腺の重量を測定してアイソトープの投与量を決めるためシンチグラフィ検査を行います。123Iカプセルを内服し、6時間後と24時間後にレントゲン撮影をします。
  • 治療日:アイソトープ(131Iカプセル)を内服します。

③外科的治療(甲状腺摘出手術)

甲状腺を一部あるいは全部摘出して甲状腺ホルモンを低下させる治療です。術後は甲状腺機能が低下し、生涯にわたり甲状腺ホルモン薬を内服する可能性があります。合併症として、手術後の頚部の出血に加え、稀に声帯麻痺や副甲状腺機能低下症による低Ca血症が生じる可能性があります。

適応

  • 甲状腺癌などの甲状腺腫瘍を合併している場合
  • 抗甲状腺薬の副作用のため薬の治療を継続できず、アイソトープ治療ができないあるいは希望しない場合
  • 甲状腺機能を早急に正常化する必要がある場合

《当院では、バセドウ病に対して飲み薬の治療からアイソトープ治療、外科的治療まで幅広く実施しています。バセドウ病を疑うような症状がある方、再発や副作用等で治療に困っている方はいつでもお気軽に受診して下さい(受診には紹介状と予約が必要です)。》

 

関連リンク

日本内分泌学会 バセドウ病 トップページhttps://www.jendo.jp/modules/patient/index.php?content_id=40

甲状腺シンチグラフィについて
https://www.hosp.ncgm.go.jp/s037/008/070/scinti_06.html

引用文献

1) Saenger EL, et al. Incidence of leukemia following treatment of hyper- thyroidism. Preliminary report of the Cooperative Thyrotoxicosis Therapy Follow-up Study. JAMA 1968; 205(12): 855–862
2)日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019
3)日本甲状腺学会. バセドウ病 131I内用療法の手引き